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あなたの金糸雀-メイドはあなたに恋をする-

第1章 秘密の夜が始まる


生前、私はOLをしていた。
趣味はゲームをしたり、漫画を読んだり料理をする事。
中でも、乙女ゲームが好きだった私は、休日や仕事が終わった平日の夜など、時間さえあれば何時間でもやっていた。

そんな私の人生は車に轢かれて呆気なくも終了し、目が覚めれば死ぬ前にゲームしていた異世界(乙女ゲーム)の中のメイドに転生を果たしていた。まぁ、未練がないと言えば嘘になる。

元々毒親育ちの両親には少々の申し訳無さしかないが(金銭面の問題で)仲の良かった友達には申し訳無さがつのるばかりだった。ゲームだって中途半端だ。

そんなこんなで数ヶ月も過ぎれば、自分の立ち位置と言うかなりふりも構わなくなり、今の人生を楽しむ事にした。
悩んでいても仕方がないのだから、この際二度目の人生を思い切って過ごして見ようではないかと。

それに、転生したからにはヒロインであるユーリ嬢と攻略対象であるミュート様(超イケメン)が結ばれるのを生で見たい!!超見たい!!と、オタク気質全開な私はストーリを見逃すまいと、色んな所に出現し切磋琢磨と働かせて頂いていた。

もちろんメイドだからと言っても、あまりにも不躾な行動は厳禁だ。メイド服はきちんと着こなし、姿勢を正し常にこの屋敷で働いていると言う意識をする事。

そう、例えるならば黒●事に出てくるセバス●ャンのように。メイドだからと教養も忘れてはならない。ドジっ子メイドなど以ての外、下手すれば首が飛ぶ(物理)。

「ここは、こんなものかしらね···?」

と、考え事をしながら夜のお仕事を終えて、使った器具を元の位置に戻して自分の部屋へ向かおうとすれば、何と、前からはミュート様のお姿がこちらに向かって来ているではありませんか!!

思わずじーーーっくりと見つめてしまいたくなる衝動を落ち着かせる為にスーハー息を吐き、お腹の前で手を組んで深くお辞儀をした。主人が通り過ぎるまでは、頭を上げてはならない規則がある。

コツ、コツ、コツ···。

革靴を鳴らして通り過ぎる音が不意に止む。
どうかしたのだろうかと気になる所だが、主人に声をかけられるまでは頭を上げてはならないと、また規則がある。

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