🌹密会🌹
第1章 🌹April🌹
職員室の扉がガラリと開く音が聞こえて、冷や汗が背中を伝ったのと同時に、私は転げ落ちる勢いでデスクの下に隠れた。
コツコツと靴底を鳴らす音が聞こえてくる度に、心臓がバクバクと音を立てた。
「米倉先生」
背中を丸めて隠れていた私に声をかけ、トントンと肩を叩いた。しぶしぶ顔を上げれば、今日も七三をバッチリ決めた日比谷教頭が私を見つめていた。
「熱心に何をなさっていたのですか?」
教頭は穏やかに話すが、眼鏡の奥の瞳は大変冷ややかだった。
「すみません...失礼致します!!!」
暫しの沈黙が続き、やがてその視線に耐えきれなくなった私は、立ち上がって軽く荷物を纏めると、教員室を飛び出した。
背後から呼び止める声が聞こえないのも、追いかける足音が無いのも逆に不気味で、学校を離れ、家に着いてからも、心臓はけたたましく鳴り響いていた。