🌹密会🌹
第5章 🌹August-2🌹
座り心地抜群な助手席に座る事10分、到着した場所はホテル街の派手なラブホ前...ではなく、黒い外壁が目を引くモダンで落ち着いた一軒家の前だ。
「もしかして、日比谷教頭の...ご自宅ですか?」
てっきりラブホに行くのだろうと予想していた私は驚きを隠せず、そう問いかけると、「その方がリアリティがあって良いだろう。」と返ってくる。
「いや、それは有難いんですけど、婚約者同然の恋人が居るんじゃ...。」
「彼女と同棲はしていない。県外に住んでいるからな。連絡はこまめに取り合っているが中々会う機会が無い。」
「そ、そうなんですね...。」
「ああ。だからそう易々と我々の関係性が露見する事は無い。安心したか?」
「はい...。」
無論安心はしたし、私の予想は全くの見当違いだったわけだが、何だかモヤモヤとした気分に包まれる。くだらない嫉妬という感情だ。
「...なんだ拗ねているのか?」
「!ご、ごめんなさい、そんなつもりじゃなくて。」
うっかり顔を曇らせてしまった事に対して慌てて謝罪をすると、グィっと強引に腕をひかれた。