
副業は魔法少女ッ!
第3章 ガラスの靴の正体は
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ゆづるを中学まで通わせたのは、父方の世話焼きな親族達だ。妹が体調を崩す度、病院に連れて行っていたのも叔母で、何かあると、ゆずるも世帯主より彼女達を頼りにしていた。
しかし皆、ゆづるの父親の家庭内での振る舞いに、一切介入しなかった。ゆづるの顔の痣を怪訝そうにもしなければ、無職の男がどのようにして子供二人を養っているか、彼らが疑問視しなかったのは、厄介ごとは避けて通りたがる、人間の本能からだったのだろう。
それは、ゆづるにとって都合が良かった。
当時、ゆづるは幼心ながら、父親が自分に強要していた売春を恥じらっていた。十にも満たない子供でも、その事実を隠すことは、物理的な救済より重要だった。
父親が連れてくる大人達は、ゆづるにぬるぬるとした液体を塗りたくって肛門に異物をねじ込んだり、手脚を縛って鞭や蝋燭で痛めつけたり、彼ら自身の股間を慰めろと命じたりした。そして一定の時間が過ぎると、ゆづるを迎えに来た父親に、一枚か二枚ほどの紙幣を渡した。
もっとも、ゆづるの羞恥が昇りつめたのは、小学校での授業だ。
ことあるごとに、教師らは、児童に親の職業や尊敬出来るところを発表させたがる。ゆづるにはそうしたものがなかった。無職の父親は飲酒か暴力を振るっている姿しか知らなかったゆづるには、中学受験のために塾に通わされたり、いたずらをして母親に怒られたり、夏には家族旅行へ出かけたりする家庭こそ、現実味を見出だせなかった。現実にはありえない、テレビやドラマの中での作り物だと。
