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デーモンハント

第7章 偉大な方

階段を上がり、薄暗い通路を進み、たどり着いたのは大きな扉の前だった。
エルザは生気の無い眼差しで大きな扉を見上げる。

「ここですよ、お嬢さん」

コートの悪魔はエルザをおろし、肩を支えながら扉に手を向けた。
すると触れてもいないのに、扉がギィィと音を立てて開く。

室内には鏡やテーブル、そして大きなベッドがある。
そのベッドの上に、一人の悪魔が座っていた。

悪魔の額には歪な形の角が生えていて、四つの目と二つの口がある。
身長は高く、二メートルは軽く超えているだろう。
今まで、多くの悪魔を見てきたエルザだったが、今まで戦ってきたどの悪魔とも雰囲気が違っていた。

コートの悪魔はエルザの背中を押して、ベッドに座る悪魔の近くまでエルザを進ませる。
そして、エルザがベッドの近くまで行ったところで、コートの悪魔は頭を下げて後退した。

「お連れしました、ごゆっくりお楽しみください」

コートの悪魔が言った瞬間、ベッドに座っていた悪魔が立ち上がり、コートの悪魔の首を掴んで持ち上げた。

「ど、どうなされました?偉大な方!?」

コートの悪魔は戸惑っている様子で偉大な方と呼ばれた四つ目の悪魔を見る。
しかし四つ目の悪魔は何も言わず、二つの口でコートの悪魔に噛みついた。

肉を食いちぎり、内臓を手で引っ張り出す。
そして肉片と血を撒き散らしながら、四つ目の悪魔はコートの悪魔を食い散らかした。

「な、何よ、これ……?」

酷い光景に吐き気をおぼえつつ、エルザはその場に座り込んでしまう。
逃げ出そうと思ったが、足が震えて立ち上がれない。

エルザは四つ目の悪魔の行動に、恐怖を抱いていた。
戦っていて、危険な目には何度もあった。
それでも、ここまでの恐怖を感じたことはなかった。

両親を失った時の恐怖に近い、絶望的なものを感じている。

コートの悪魔を食いきった四つ目の悪魔は、ゆっくりとエルザの方へと振り向いた。

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