ほしとたいようの診察室
第1章 プロローグ
***
着慣れない、まっさらなスーツを身につけている。
母が選んでくれたスーツだ。
建物に入った瞬間からしていた消毒の匂いはどこか懐かしくて……懐かしいから、余計に緊張した。
病院はどこもかしこも、こういう匂いがするらしい。ノックして入った部屋も、隅々までその空気が流れていた。
面接官は3人。柔和な表情を浮かべた男性が、会釈をした。
「では、学校と学科、名前を教えてください。」
「桜堂短期大学生活科学科から来ました、星川のぞみです」
「星川さんですね。おかけになってください。では面接を始めていきますーーーー」
なぜ、ここで働きたいか。
理由はひとつ。
息をすって、ゆっくり話し始める。
思い浮かぶのはぼんやりと、遠い記憶の中にある先生達の顔。
それから、わたしに『つくる』という新しい楽しみを生み出してくれたこと。
「幼い頃の入院生活はつらかったのですが……ここの食堂のプリンがおいしくて、元気になったのを覚えています」
だから。作れるようになりたかった、わたしも誰かを元気にできるようなものを。
……上手く話せているだろうか。
声が震える。とにかく伝われば……。
面接官がにっこりと微笑む。
……内定の通知が届いたのは、その1週間後のことだった。
着慣れない、まっさらなスーツを身につけている。
母が選んでくれたスーツだ。
建物に入った瞬間からしていた消毒の匂いはどこか懐かしくて……懐かしいから、余計に緊張した。
病院はどこもかしこも、こういう匂いがするらしい。ノックして入った部屋も、隅々までその空気が流れていた。
面接官は3人。柔和な表情を浮かべた男性が、会釈をした。
「では、学校と学科、名前を教えてください。」
「桜堂短期大学生活科学科から来ました、星川のぞみです」
「星川さんですね。おかけになってください。では面接を始めていきますーーーー」
なぜ、ここで働きたいか。
理由はひとつ。
息をすって、ゆっくり話し始める。
思い浮かぶのはぼんやりと、遠い記憶の中にある先生達の顔。
それから、わたしに『つくる』という新しい楽しみを生み出してくれたこと。
「幼い頃の入院生活はつらかったのですが……ここの食堂のプリンがおいしくて、元気になったのを覚えています」
だから。作れるようになりたかった、わたしも誰かを元気にできるようなものを。
……上手く話せているだろうか。
声が震える。とにかく伝われば……。
面接官がにっこりと微笑む。
……内定の通知が届いたのは、その1週間後のことだった。