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4.5畳の遊び場

第1章 はじまり


……………

………

…?

彩花の瞼越しの世界に、影がかかる。
同時に、ギシ、とベッドの軋む音。
そして、腰に少しの重みと温かさ。

「お前さー、それはいけないんじゃねぇの。」

目を開くと、眉を顰めた奏人が、彩花の上に跨っていた。

「何してんの。」
「なんでわかんねぇんだよ…、」

困ったように、呆れたように頭を掻いた奏人は、ジト、と睨むような目で彩花を見つめた。

「男の前で、軽率に横になるんじゃねぇってこと。」

一瞬だった。
奏人は彩花の両手首を片手で掴み、頭上に押さえつける。驚いた彩花が目を開くのと同時に、彩花の視界は奏人の顔でいっぱいになった。

「ん、んむ、っ、」
「おとなひく、ひてろ、」
「ん〜ん!ん!む、ぁ、ぅ、」

ガブリと噛みつかれ、呼吸をしようと口をひらけばチャンスとばかりに舌が入り込む。逃げるように舌を動かしても、狭い口内には逃げ場なんてなくて、あっさりと絡め取られてしまう。
じゅ、と吸い出され、舌先を擦り合わせるように動かされると、あっという間に力が抜けた。

「ん、」

くたりとだらしなく横たわった彩花を、余裕そうな奏人は見下ろす。
酸欠で出た涙と、つけっぱなしの照明のせいで、目がチカチカする。

「わかったか。」

「〜〜!わかんない!友達でしょ!?」

「15年来のな。」

「じゃあなんで!」

「知らね、黙って寝とけ。」

「ッ!」

うるさい、とか、やめて、とか、言えることはたくさんあった。それでも、言えなかったのは、彼のギラついた瞳を見て、やっと理解したから。

食べられちゃう。

本能で理解したのか、それとも歳のおかげで多少なりともある知識のせいなのか。

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