I‘m yours forever
第4章 美月は何も知らなかった 前編
「日比谷教頭ってさ、結構過保護だよね。」
全席個室の居酒屋にて、テーブルの上に置かれた唐揚げを箸で掴み、モグモグと咀嚼しながら三原先生はそう言う。
「そう...ですね。まあ心配してくれるのは嬉しいんですけど....。」
「あ、別にそれが悪いって言いたいんじゃないよ。ただ日比谷教頭って頼りになるけど、世話焼きな人ではなかったでしょ?結婚って人を変えちゃうんだなぁって。」
....人を...変える...?
「あの...彼って厳しく見えるけど実は世話好きな方...ではないんですか?」
感慨深そうに言いながら、ビールジョッキでツマミを流し込んだ三原先生に私はそう言うと、彼女は信じられないと言わんばかりに目を見開いた。
「何言ってんの?!∑(゚Д゚)彼が世話好きなわけないじゃん(笑)」
「で、でもセクハラを止めて下さったり、三原先生のご相談に乗って下さったりしていたんですよね?」
「それは日々職員を監督する立場にあるわけで、相談に乗ってくれたのだって彼の仕事の1つだから。職員室の平和と円滑なコミュニケーションを築く為よ。」
「そう...なんですか?」
「そうよ。まあ校長の補佐だったり、色々学校の総合的な調整とかやってて多忙な身の上だからっていうのもあると思うよ。でも別に親身になってくれないわけじゃないから不満は無いけどね。」
「そうなんですか...労いの言葉をかけてもらったり、何度かコーヒーを奢ってもらったりとか色々して頂いた記憶しかないんですけど....。」
「.....コーヒー?何それ。」
「缶コーヒーですけど....。夜遅くまで仕事してた時とかよく頂きました。」
「いやいや無いよ。アタシ1回も無い。美月ちゃんだからか?え、それっていつから?」
「多分3年前かと...。」
「3年前...。」
そう言うと三原先生は考え込むような素振りを見せた。