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老人ホーム

第8章 夜勤 前半

この施設で働き出してから今日で6ヶ月が過ぎ、僕も夜勤のシフトに入ることになった。

夜勤は、通常の昼間の勤務と違う動きをしなければいけないので、田中と同じシフトで田中について覚えることになっている。

夜勤は夜勤で、少ない人数でこなさなければならない分、忙しい。田中に教えてもらいながらの動きなので、2人で同じ棟の仕事をしてはいるものの、時間はそれなりにかかる。

今日の田中と僕の担当は、西棟だ。ナースコールもその担当の介護員が対応に当る。

夕食後、一通り利用者さんをベッドへ寝かせてから、夜勤者の僕らも、食事休憩に入った。

僕を含めて4人だ。本来は、一人少ないのたが、僕が教育される立場ということで、今日は、一人多い。夕食を食べながら、今日いる職員の中でたぶん一番年上の村山さゆりが言った。

「今日、平林君と田中さん、西棟だよね!今日は、田中さんいるから良いけど、平林君一人になったら、山田さんのコールどうするの?」

と言った。村山はたぶん40代半ばくらいの年齢だと思われる。すると田中は、

「他の2人のうちどちらかに頼むしかないわね!」 

と言った。僕は、言ってる意味が分からず、

「何の話ですか?」

と聞くと、田中は、

「山田さん、夜になると頻回にコール鳴らすのよ!たぶん女性じゃないと、納得しないと思うんだよね!ほら、ここの男性介護員って、他の人パートさんだから、夜勤やってないでしょ!だから、今までそういう問題起きなかったんだけど…。」

と言った。僕は、

「コールなら自分でも対応出来ると思います!」

と言うと、田中は、

「女性と話したいのよ!山田さん!だから、たぶん男性が行っても、また直ぐにコール鳴らすと思うんだよね!」

と、言った。もう一人の介護員、白山直子も、

「あの人は、男じゃダメだわ!女じゃないと!」

と言った。白山は、三十代半ばくらいのちょっと太めの貫禄ある体型の女性だ。

田中は、

「たぶんこれから山田さんのコールがあると思うから、その時は私がいくから、平林君は、他の仕事しててくれて良いから!村山さんや白山さんに教わって!」

と言った。僕は、やっぱり利用者さんは癖の強い人もいるんだな!と思った。


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