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主治医との結婚生活

第4章 初めて…

初めて… の事も覚えている。

日頃の仕事に疲弊していた奏真さんを、
ドライブデートに連れ出すべく
突撃訪問した時の事だった。

「先生〜!デートしましょう? 
隣で寝ててくれるだけで良いですよ?」

そう言って先生の家を訪ねれば…

「…! 何ですか?! この荒れ放題の家は?!
死んじゃいますよ?!」

玄関まで押し寄せるゴミの山に驚愕した。

「もうっ! デートはナシで良いです!
掃除します! 」

そうして私はドライブデートのつもりが、
急遽大掃除をする家政婦になった。

あっという間にゴミを仕分け、
洗濯機、食洗機を回す。

ゴミの山に埋もれていた
お掃除ロボットを救出し、
タッグを組み部屋をピカピカにする。

「奏真さんは寝てて良いですよ? 
お腹は空いてませんか?」

先生は青白い顔をして顔を横にふる。

「わかりました! おやすみなさい!」

寝室に奏真さんを押し込め、
私はその間にスーパーに行き、食材を買い込む。

慣れた作業でおかずを作り、タッパーに詰め、
冷ます。

「うん…!これだけ作っておけば数日は
保つかな?」

あとは冷凍保存するだけだ。

冷蔵庫はミネラルウォーターくらいしか
入っていない。

ドクターなのに… 
体壊したらどうするんですか…!

私は奏真さんの母親になった気分で
プリプリと怒る。


ウチは母子家庭で、家事は殆ど私が請け負って来た。
母の生活力の無さに比べたらカワイイものだけど…

「こんな生活知ったら… 心配になるじゃない…」

キッチンに立って味噌汁を作り始める。

食欲は無くても…
お味噌汁くらいなら入るかな?  

煮干しで出汁を取って…
玉ねぎとじゃがいもの味噌汁を作る。


今日は… コレで終わりかな…?
滅多に無い シフト被りのお休みだったけど
一緒に 過ごせなかったな…

ちょっと残念に思いながらも、普段の重労働を
思い出したら仕方がない…、と納得する。

メモ書きを残して、味噌汁を冷蔵庫にしまう。


また… 明日…

心の中で先生に挨拶をして、玄関に向かう。

と、突然 背中から ぎゅっと抱きしめられた。

奏真さんの匂いに一気に包まれると
我慢していた涙が溢れた。

「明花ちゃん…。」

奏真さんに振り向き 見上げる。

「今日はごめんね。 ありがとう…。」

奏真さんに向き直って抱きつく。


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