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碧い雨の夜に…

第1章 【衝動的に……】






そんな顔して笑うんだね。
笑ってる方が断然可愛いよ。
少しでも気分が晴れたら良いなって思う。
抱えてるモノはわからないけれど、こうして一部の時間を一緒に過ごしたことは思い出として心に残ると良いよね。




メイクをしたら息を呑むほど綺麗だ。
昨日の服も乾いてる。
改めて見惚れてしまうほど。




「じゃ、行きます……ありがとう、見ず知らずの私を泊めてくれて」




完璧な女の子になってて完敗です。
「あ、待って」と私にリップを塗ってくる。
「リセちゃんはこっちの色が似合ってると思うよ、新しいからあげる」ってお礼にと手渡された。




連絡先も知らないまま、一度は手放した。
迷い込んだ子猫を一時保護しただけで、自らの足で外の世界へ帰っていく。
携帯壊れたって言ってたし、モデルさんなら事務所とかの制限も色々あるだろうしね。
まぁ、いつかまた会えると良いね……くらいの感覚。




「いつでも来てくれて良いよ、昨日みたいな時間か……火曜日とかは割りと早く家に居たりする」




ただ、玄関先で見送れば良いだけなのに口からついて出た。
靴を履いたら更に身長高くなってる。




「はい、ありがとうございます」




あまり引き止めるものじゃないってわかってる。
こっちから連絡先渡すのも違うのかなって。
でもよくわかんないけど、身体が自然と動いたというか、突き動かされたというか。




手を広げて、おいでとハグポーズする私に一瞬固まる彼女。
「ん……」と催促してもなかなか難しいか。




「ナオちゃんも甘えたい時くらいあるでしょ?行ってらっしゃいのハグだよ」




「え……でも、男の子…だよ?忘れてない?」




「甘える時にそんなの関係ある?私が良いなら良いんじゃない?おいで、あと5秒で終わっちゃうよ」




「え、え?」




そう急かすと慌ててハグしてきた。
遠慮がちだけどギュッとしてあげたらギュッて返ってきた。




「甘えたくなったら帰っておいで」




「………はい」




「仕方ないから当分は引っ越さないでいてあげる〜」




「わ〜ありがとう」




最後の1秒まで笑って手を振った。
私との思い出が色褪せないように。
ちゃんと心の中に留まるように……と。









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