碧い雨の夜に…
第6章 【運命的に……】
今まで女の子としてモデルをしていたナオが、いよいよメンズとしても頭角を現し一気に人気に火がついた。
本人的には少し複雑なようで。
どちらかと言うと、メイクバッチリされてカメラの前に立つ方が違う自分になりきれるそうだ。
素の自分はあまり曝け出したくないみたい。
どんな顔すれば良いのかわからなくて表情筋が強張るんだって。
あのビル広告のときのナオはかなり別人に見えたから、そのギャップが世間にも好評だったんだよ。
一時はトレンド入りしたらしいし。
遠くなりそうで繋ぎ止めてくれた赤い糸。
ナオは私の欲しい言葉をわかってる。
「行ってくるね」と何度も言うナオは玄関先から動かない。
今日は私が見送る番なのに振り返ってはハグしてキスしてくる。
クスクス笑って「早く行かないと遅刻しちゃうよ?」って言ってあげるのに「離れたくない」とか。
朝からご機嫌ナナメな原因は
私が再び韓国行きが決まったからかも。
しかも次は更にビックなオファーだったりする。
世界的に有名な韓国のボーイズグループからソロデビューも果たしている人気絶頂なお方のソロツアーが決定し、その専属ダンサーとして私も招集された。
一緒に仕事が出来るなんて一生分の運を使い果たしたと言っても過言ではないくらいビックな人だ。
勿論、断る理由もない。
ナオも一緒に喜んでくれたのに。
「……やっぱり寂しい」
「うーん、ごめんね?」
「良い、死ぬ気でチケット取るから」
売り出したら即ソールドアウトな人だけど大丈夫かな?
まだ渡韓するのは先だけど、もうすでにナオの中では1分1秒でも逃したくないらしい。
スケジュール帳も共有してるし、携帯だって暗証番号も教えてるくらいなのに。
何が心配なんだか。
「シユンさんもそうだけど、またあのアキラって人も同行するんでしょ?」
そう、アキラは一心同体だから、ダンサーとして声がかかれば自ずと一緒に行動することになる。
離れて仕事を引き受けたことも過去にはない。
「ねぇ、私の全てを知ってる人は誰?私のこれからの人生も全部握ってるのは他の誰でもないナオでしょ?それとも私の気持ちが信用ならない?」