碧い雨の夜に…
第1章 【衝動的に……】
「あ〜違う違う、ちょっとした気分転換」って言ったのも全然信じてくれなくて。
そうだよね、今までこんなヘアアレンジしたことないもん。
いきなりイメチェンしてきたらなんぞや!?ってなるよね。
「そろそろ子猫ちゃん彼氏見せてくださいよ〜」
「いや、本当勘弁して?そんなんじゃないから、子猫ちゃんだから」
「絶対ウソだぁ〜!顔赤いですもん、リセさんウソつけない人だからバレバレですよ?」
「………………っ」
そんな私を面白がって冷やかしてくる仲間たちと輪に入って来ようとしないアキラ。
スタジオ終わりでバッタリ鉢合わせした時も「おう」とだけで目線合わして来ないから、もう良い加減放っておくか……と諦めた。
「リセさん今日いつもより可愛いっす」と男の子の生徒たちに囲まれて
「写真一緒に撮ってください」って何度も頼まれた。
SNSで動画はあげてるけど、顔出しはしていない。
踊ってる時もキャップ帽にマスクしてるからほとんどわからないはず。
だからツーショットとなると完全に顔バレしちゃう。
SNSにあげないと約束させても極力避けたいんだよね。
事務所の公式ホームページにはがっつり顔載せしてるんだけどね。
最近始めた動画投稿で割りとバズってるから宣伝効果もあり、ちょっとした覆面ダンサー的な方向でいっちゃってるもんだから事務所の許可なしで行動するのは如何なものかと。
「じゃ、これで勘弁して?」と着ていたジャンパーのフードをキャップ帽の上から深めに被り、黒のマスクも着けて目を閉じたままピース。
SNSにあげないでね?と念押ししておいた。
彼らが去った後、後片付けしていたフロアで「あの、俺ともツーショット良いですか」って言われて振り返るとアキラで爆笑した。
「何してんの?ツーショット?バカじゃん、アハハ」
「今日マジで可愛いっす」とかさっきの生徒の真似しててウザい。
ていうかアキラとは撮らないから。
モップがけしてるのに邪魔だよ。
それなのに「お願いお願い、撮るよ?」ってスマホのインカメで密着して撮るから素の顔しちゃったけど。
マスク取って「貸して」とスマホを奪い取った。