碧い雨の夜に…
第3章 【必然的に……】
朝早くに鳴り響いた電話。
この着信音は私のじゃない。
隣から温もりが消えていく。
起き上がったナオが電話に出ている。
ボソボソと話していてうつらうつらの私には聞こえない。
ナオが居たところのシーツを軽く握り締めた。
まだ温かい……早く帰ってきて、ナオ。
少しして髪を撫でてくれる手の感触で薄目を開けた。
「ん……ナオ、電話?仕事?」
「あ、起こしちゃった?ごめんね、うん、仕事の電話だった」
「え………行かなきゃいけない感じ?」
「ううん、大丈夫」
「そっか………じゃ、もう少し寝よ?」
そう言うと隣に入ってきてくれた。
ぴったり身体をくっつけて腕の中にすっぽり入る。
「寝ながらで良いから聞いてね?何か……事務所の方にかなりの問い合わせが来てるみたいで、その報告だった」
寝惚け眼で「問い合わせ?」と聞いたら額に優しくキスを落としてきた。
「一応、事務所とは男でも女でも二足の草鞋…的な感じでやっていこうかって話していたんだけど、この前このままの姿で撮影したって言ったでしょ?アレで……モデル名を教えてって問い合わせが殺到してるって言われた」
「ん……良い意味で、だよね?ほら、ナオ格好良いから……あぁ、もう理世だけのナオじゃなくなってく……」
「そんなことないよ、ボクはリセちゃんだけ、とりあえずモデル名の発表は控えてくれてるみたいなんだ、ボクがそうお願いしてるから」
「え、そうなの?」
ガバっと起き上がった私の乱れた髪を綺麗に整えてくれながら頷いてる。
「二足の草鞋、だからね、今は正体を明かしたくないっていうか事務所もそれを納得してくれているしボクの好きなようにって尊重してくれてる」
「有り難いことだね」
「うん、今の社長には頭上がらないくらいお世話になってる」
「じゃ、もう少しくらいはナオのこと独り占め出来るんだ?どっちの姿も」
「最初からそうだよ、ボクはリセちゃんに独占してもらう為に生まれてきたんだ」
「アハハ、だよね〜」
「え、何処行くの?」
「歯磨き……顔も洗う」
「ついてって良い?」
「トイレも?」
「トイレも」