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碧い雨の夜に…

第3章 【必然的に……】






タクシーで向かう中、終始手を握りしめて落ち着かせる。
何の根拠もなく「大丈夫だよ」とは言えないけど、ナオの緊張感からちょっと厳しい人なのかな…と推測していた。




着いてみて改めて思ったけど、ナオの事務所ってかなり大手なんだね。
その辺は疎いからよく調べてなかったんだけどさ、結構今でも活躍してる著名人が出身だったり在籍してたりする。




まずはちゃんと親子で話してもらおうと別室で待つことにした。
マネージャーさんに通された隣の部屋にて待つけど、聞き耳を立ててしまう。
大丈夫かな、心配だ。
どんな綺麗な人なんだろう。




コンコンとノックされて出てみると
「やっぱり隣に居て欲しい」と手を握るナオが居た。
そして、メイクした女のコバージョンで会うと言う。
急いでフルメイクしてウィッグを被ったナオは出逢った時くらい綺麗で眩しかった。




ドキドキしながら母親の待つ部屋をノックさせる。
少しだけ開けてナオは韓国語で話し始めた。
慌てて携帯で翻訳機能を出す。



「母さん、心配かけてごめんね……母さんの思い描いている僕とは少しかけ離れているかも知れないけど、母さんにも見てほしい、僕のもうひとつの姿なんだ、心の準備は良い?」




中から「出来てるわ」と優しい声が聞こえてきた。
いざ、対面の時。
震える手を握り締めてバン!と扉を開けて入った。




王子様でもなく、お姫様な姿の息子と5年ぶりに再会した母親の反応とは?




口を両手で押さえて驚いている。
無理もないだろう。
完璧なまでに女のコなのだから。
目を潤わせて最初に言う一言とは何なのか。




「なおと?なおとなの?」




ナオの姿に涙を浮かべてハグしてきた。
スッと繋いでいた手を離してあげるとナオも泣きそうになりながら母親を抱き締め返していた。




ずっと不安だった思いが溶かされていくようだ。
「びっくりしたじゃない」と背中を叩かれている。
息子の無事を噛み締めながら確認しているみたい。
5年ぶりだもの。
自分も明日くらいに母親に連絡入れてみようかなって思った。




びっくりされたけど、隣で私も号泣していた。
親子の再会とか絶対泣けるやつ。




「母さん、僕の大切な人です」と紹介を受けた。
私と同じくらいの背丈でナオは間違いなく母親似だと確信する。








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