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秒針と時針のように

第6章 秒針が止まるとき


「あっん……あ、まっ」
「待たない」
 忍がオレの首に手を回して抱きつく。
 可愛いけどこれじゃ顔が見えない。
「忍。見せて」
 そうして忍の手をまとめて頭上で押さえる。
「て、め……好きだな、あっ、それ」
「だって忍の逝く顔見たいし」
 それを聞いた途端顔を逸らす。
「……ばかが」
「うん。オレは世界一馬鹿で忍が好きなの」
 ギュウッと中が絞まる。
 忍は真っ赤だった。
「……、だ」
「え? 聞こえない」
 わざと激しく腰を打ち付ける。
「や、あ、く……うあ」
 舌を出して喘ぐ忍の口を奪う。
 熱にうなされそうだ。
「んんっ」
 快感がぞくぞく這い上がる。
 あのときの背徳的な感じとは違う。
 心のそこから幸福を感じる。
 大好きな忍がよがってる。
 オレを見て。
 それだけでこんなに気持ち良い。
「た……くっ」
「なに?」
 手を解放すると、忍がオレの顔に触れた。
 頬から唇、眉に瞼をなぞる。
「拓」
 忍がにっこり笑う。
 初めて見た。
 屈託のない笑顔。
「はぁあッッ」
 そのまま二人とも果てる。
「な、か……熱っ」
 抱き合って余韻に浸る。
 忍が耳元で囁いた。
「イッたか……拓」
 官能的な吐息で。
「イッたよ。忍は?」
「きくなよ……はぁっ、あ」
 まだビクビクしてる。
「知ってるくせに……」
「忍の口から聞きたいんだもん」
「てめぇの腹に跳ねてんのが証拠だろうが」
「やめなさい。そんなもう……可愛すぎんだろうが」
 汗に濡れた体。
 カチカチ。
 二人の息と、秒針の音しか聞こえない。
「忍」
「てめぇの声好きだ。もっと呼べ」
 顔を起こして忍を見つめて囁く。
「忍」
「ふっ……」
「忍。忍可愛い」
「何回も言うな」
「何回も言いたくなるんだ。オレの忍は世界一可愛くてツンデレで」
「ツンデレじゃねぇよ」
「忍が違ったら誰がそうなんだよ」
「……結城」
「あいつはそんな器用じゃない」
「確かにな、ははっ」
 沈黙が下りてくる。
 しばらくして忍が呟いた。

「そろそろ行かなきゃ」

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