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秒針と時針のように

第6章 秒針が止まるとき

 体の底から熱が上がってくる。
 自制できない熱が。
 バッと忍を見る。
 動かずに眼を閉じて横たわって。
「あ……」
 空気が入ってこない。
 体が痙攣しようとしているのに全く神経に伝わらない。
 全身が痛むのに感覚がない。
 矛盾。
 矛盾。
 矛盾。
 引きちぎられそうな虚無。
「あぁあああああああああっ」
 地に向かって吐き出すように叫ぶ。
 誰が悪い。
 誰にぶつければいい。
 そんなの答えなんてないから。
 悲鳴がつんざく。
 拳に肌がめりこむ。
 衝撃が脳まで貫く。
 ナニかを否定したくて。
 取り消したくて。
 ただただ暴走したんだ。
「鎮静剤をっ」
「先生っ、危ない!」
「人を呼んでっ、早く」
「古城さん。古城さん、聞こえますかっ」
 聞こえねえよ。
 ……うぜえな。
「はははははっ」
 うるせえ。
 笑ってるのは誰だ。
 そんなに楽しそうに。
 消してやる。
 みんなみんな。
 犯人なんていないから。
 誰をヤったって同じ。
 視界の端に光が走る。
ーてめぇはいつまで馬鹿やってんだよー
 忍がそこにいる。
 息をしないでいる。
 相手の運転手と同じ次元に。
 オレには届かない場所に。
 いる。
 いない。
 いる。
 いない。
 矛盾ばかりで死にそうだ。

 衝撃の後に、世界が消えた。

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