もうLOVEっ! ハニー!
第7章 彼女の横顔
対比されて赤すぎる唇が開く。
「バカんな」
ひゅっと呼吸が詰まった。
声の波紋が全身を揺らして私を包み飲み込もうとしてくる。
がくがく震える脚は支えるのがやっと。
「そう呼ばれて、いじめられてたんだよね? 松園さん。柚にもつばるにも。だからここに来たんだよね」
遠慮なんて一切ない口調。
本当に猫なんていたんでしょうか。
「……その私は死にました」
「過去と決別? できるわけないじゃん! そういう勘違い野郎が多すぎるんだよねココ。管理人も杜撰だしさあ~、一週間で飽きちゃった。だから柚に聞いたんだあ。松園さんのこと」
「無断で過去を探るなんて最低です」
「知ってる。でも飽きたんだもん」
しょうがないでしょ。
言葉尻にそう聞こえた。
なんて人でしょうね。
つばるがまだ礼儀正しく思えます。
「松園さんてさ、もって生まれた空気がもう同性には嫌悪感しか沸かせないんだと思うの。弱々しい口調だし。守ってください感ていうの? うざーい。本当に無理。なのに持て囃されてるでしょ。陸先輩だって無意識にしょっちゅう見てるし……目障りなんだよね」
「ずいぶん思いきった発言ですね」
「溜まってたんだもん」
櫻井柚が見える。
彼女の後ろに。
幻覚だとはわかってるのに、動悸が乱れ始める。
毒を含んだ言葉は言霊すら殺す。
そんな一節が浮かぶ。
「言っておくけど松園さんと仲良くする気はさらさらないから。そっちも私のこの性格見抜いて避けてたみたいだし。そりゃわかるよね? いじめっこの空気はさ! 得意でしょ」
「ええ、おかげさんで」
風が髪を揺らす。
いつの間にか翳り出した夜空。
向かい合う二人の顔には深い陰影が。
「櫻井柚にバラしたんですよね」
「そこまで知ってるんだ。つばるは相当気を許してるんだね」
なんの話です。
「目的はなんですか」
そこで薫がにまっと笑った。
ああ。
猫。
「松園さんを消すこと」