もうLOVEっ! ハニー!
第7章 彼女の横顔
一瞬でつばるから引きはがした私の身体の彼に触れていた部分をはたきつつ壁際に追い込みながら美弥がまくしたてる。
「なんでこんなとこ居たのー? なるみんに探せって言われたんだよ」
なる先生が?
「あ、さっき医務室でちょっと」
「じゃあボクと一緒にいこっか」
手を繋いでにまっと笑う。
安心。
心の底から安心する。
「その前に、ちょっと状況説明してくれるかにゃ? 後輩が三人もこんな夜中に離れで密会してると気にせずにはいられないんだよね」
つばると薫を見比べながら。
二人は恐らく別々の理由で目を逸らしていたが、そこでやっと会釈した。
その反応に不満気味になりつつも、美弥は無感情スマイルで応対した。
目が笑ってない。
敢えて相手に伝えているかと思うほどにあからさまだ。
「えっと、ちょっとサークルのことで相談があったんでつばるくんとかんなちゃんに頼んでたんです。す、すみません、連れ出しちゃって……もう、部屋に戻りますね」
どもりながら去る薫に唇を突き出す美弥。
つばるくんにかんなちゃん、ですか。
いつでもすぐそばに猫の皮を常備しているのですね。
今度はつばるが口を開いた。
「俺も戻りますね」
だがそう言ったつばるのシャツの襟をがしりと掴んで引き寄せると、美弥は低い声で言った。
「本当の理由が知りたいなあ?」
「さっきので大体合ってますけど」
「あの、美緒先輩」
「かんなはお口チャックで。ボクはつばるに訊きたい。あの腹黒女なんて元々信じてないし」
ずけずけと言う彼女につばるは些か驚いたようだが、溜息を吐いてから襟の手を外す。
「別に。俺がちょっとかんなと言い合いになってたとこにあいつが偶然通りかかって喋ってただけです」
「簡単に嘘をばらしますね」
「仕方ねーだろ」
「いつの間にそんな仲良くなったの、かんな。ボクこいつのことレベル五で警戒してたんだけど」
「ひにゃっ? いえ、その、最近です」
するりと後ろから身体を撫でまわしながら問われたので変な声が出てしまう。
それから目を背けるつばるを見て、いきなり美弥が詰め寄った。
つばるの頭に手を回し、ぐいっと顔を引き寄せさせる。
「……なんすか」
「あのさ、かんなになんかした?」
あうとな質問です。
つばるは眼を泳がせることもなく、まっすぐ否定した。
「別に何もないすよ」