もうLOVEっ! ハニー!
第7章 彼女の横顔
「かんなってさ」
少し落ち着いた声で岳斗が言う。
オレンジ色の豆電球に照らされた顔は、本当にお稲荷様の化身のように美しく。
どきどきしてしまいます。
「はい」
「つばるに何て命令したん?」
あ、そういえばそうでした。
折角譲ってくださった先輩に何も話していなかったのですね。
「す、すみませんっ。私全然報告もせずに」
「いや別に報告とかはええんけど、ちょっと気になってな」
「名前で呼べと」
「……は?」
わかりやすく眉を潜められる。
「あぅっ、あの……つばると私は……寮に入る前にちょっと関係があって……その、その関係を白紙に戻したかったので、名前で呼んでもらおうと。古い私を消したかったのでその」
だんだんと何を言っているのかわからなかくなってくる。
きっと先輩も呆れている。
こんな決意のことなんて、自分以外に理解されるはずがない。
カリカリ、と顎を爪で掻きながら岳斗が考えを整理するようにぐるりと目を回す。
「えー……つまり、かんなはつばるとここで関係をやり直したいってわけやな」
「そんな感じですっ」
「っつーことは……前の関係って相当えぐかったん?」
大体知ってるけど、岳斗は腹の中で呟く。
「なんでしょう、その。私つばるに名前で呼ばれたことなかったんですよ。なので、名前で呼ばれたら……新しい自分が始まる気がして」
顔が赤くなる。
やだな。
なんだか、自分が変に思えてきます。
「ふーん。そっか」
そっけなく呟いた岳斗が脚を組む。
少しだけ変わった温度に目を上げると、冷たい眼で岳斗が宙を睨んでいた。
「えと……先輩?」
ちょっとだけ、怖かった。
清龍先輩との関係を問いただした時のつばるのような眼。
怒り?
読めない。
「ん。いや、なんでもないで」
にっといつもの笑顔に戻る。
どこか不自然な笑顔に。
ギシ、とベッドを鳴らして立ち上がると、シャツを正しながら岳斗が言った。
「さあてと。そろそろ来るんやない?」
「なにがですか?」
こちらを振り返った岳斗が意味ありげにほくそ笑む。
「邪魔物軍団や」
ドンドン。
ノックが鳴ったのは、同時でした。
「かんなー! あそぼー!」
「あ、美弥先輩」
「ガクせんぱーい! いくらなんでも手出してたら許しませんよー」
「ふ……こばるか?」
二人で一階に降りる。
まだ夜は長そうです。
少し落ち着いた声で岳斗が言う。
オレンジ色の豆電球に照らされた顔は、本当にお稲荷様の化身のように美しく。
どきどきしてしまいます。
「はい」
「つばるに何て命令したん?」
あ、そういえばそうでした。
折角譲ってくださった先輩に何も話していなかったのですね。
「す、すみませんっ。私全然報告もせずに」
「いや別に報告とかはええんけど、ちょっと気になってな」
「名前で呼べと」
「……は?」
わかりやすく眉を潜められる。
「あぅっ、あの……つばると私は……寮に入る前にちょっと関係があって……その、その関係を白紙に戻したかったので、名前で呼んでもらおうと。古い私を消したかったのでその」
だんだんと何を言っているのかわからなかくなってくる。
きっと先輩も呆れている。
こんな決意のことなんて、自分以外に理解されるはずがない。
カリカリ、と顎を爪で掻きながら岳斗が考えを整理するようにぐるりと目を回す。
「えー……つまり、かんなはつばるとここで関係をやり直したいってわけやな」
「そんな感じですっ」
「っつーことは……前の関係って相当えぐかったん?」
大体知ってるけど、岳斗は腹の中で呟く。
「なんでしょう、その。私つばるに名前で呼ばれたことなかったんですよ。なので、名前で呼ばれたら……新しい自分が始まる気がして」
顔が赤くなる。
やだな。
なんだか、自分が変に思えてきます。
「ふーん。そっか」
そっけなく呟いた岳斗が脚を組む。
少しだけ変わった温度に目を上げると、冷たい眼で岳斗が宙を睨んでいた。
「えと……先輩?」
ちょっとだけ、怖かった。
清龍先輩との関係を問いただした時のつばるのような眼。
怒り?
読めない。
「ん。いや、なんでもないで」
にっといつもの笑顔に戻る。
どこか不自然な笑顔に。
ギシ、とベッドを鳴らして立ち上がると、シャツを正しながら岳斗が言った。
「さあてと。そろそろ来るんやない?」
「なにがですか?」
こちらを振り返った岳斗が意味ありげにほくそ笑む。
「邪魔物軍団や」
ドンドン。
ノックが鳴ったのは、同時でした。
「かんなー! あそぼー!」
「あ、美弥先輩」
「ガクせんぱーい! いくらなんでも手出してたら許しませんよー」
「ふ……こばるか?」
二人で一階に降りる。
まだ夜は長そうです。