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もうLOVEっ! ハニー!

第8章 優越鬼ごっこ

 華海都サークルのキャンプが終わり、夏休みが近づいてきた。
 半袖に馴染み、暑い日々を扇子片手に皆々思い思いに紛らせている。
 寮の食堂では新メニューが好評になっている。
「しーちゃん、マイスちょーだい」
「変な略するんじゃない」
 マシュマロアイス。
 バニラアイスの中に小さいダイス型マシュマロが大量に入っている。
 さらにその回りにはフローズンストロベリーが散りばめられている。
 百円でこれが食べられるのだから、常に注文が絶たない。
「うめえなこれ」
 銀のスプーンをくわえながらこばるがつばるに笑いかける。
 だが、声をかけられた本人はむすっとした表情で結露が伝う容器を見つめていた。
「あれ。嫌い?」
「別に」
 そんな様子も気にもとめないといった態度で弟のアイスを取り上げ味わう。
「なんだよ。キャンプが終わってから更に不機嫌デイズだな、お前」
「兄貴は気楽でいいよな……」
「あ?」
 つばるの目線が一瞬、岳斗とかんなと美弥が並ぶカウンターに飛んだ。
 すぐに戻して溜め息を吐く。
 だが、こばるは腑に落ちたと頷く。
「コロッケ早食いはもう後悔するなよ。結局あの夜かんなとガク先輩は二人きりになってないだろ」
「そんなこと気にしてねえよ」
「気にしてんだろが。それともあれか? ガク先輩には敵わないって不貞腐れてんのかよ」
「何に対してだよ」
「……男気?」
「……バカ兄が」
「ああんっ?」
「うっせぇよ……見られてるだろ」
 そこにニヤニヤとした手鞠賢が現れる。
「なあなあ。こばりん知ってるか」
「なんだ?」
「尚哉恋してるみたいだぞ」
「ぶはっ。マジで?」
 ヘッドホンを揺らしながらマリケンが肩で笑う。
「いやあもうわかりやすくて」
「誰に?」
「決まってるだろ」
 そこでつばるが席を立つ。
 兄以外にはまだ打ち解けていない。
 その背中を見送ってからこばるはマリケンの口許に耳を寄せた。
「誰だよ?」
「こばりんも見てたらわかるよ」
「あの堅物チビの好みなんて知らねぇもん」
「ちょ、言い方」
 久瀬尚哉はそんな噂をされているとも知らずに食堂に入ってきた。
 ちらりとかんな達を一瞥してマリケンの近くに腰かける。
「マリケン。明日の数学のテスト範囲どこだっけ」
「微分」
「……だった」
 苦い顔をしたあとに、ニヤニヤした二人に気づき眉をしかめる。
「……なに?」

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