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もうLOVEっ! ハニー!

第9章 本性探し


 とりあえず、ですね。
 何故、さっき勝手に登校を誘ってきたつばるがいないのかと言うことですよね。
 隆人さんに見送られて私としては勇気だして来たわけですよ?
 鞄を見下ろす。
 キス……
 あああ、ダメです。
 考えたら敗けです。
 はあ。
「あれ? かんなやん」
「岳斗先輩、おはようございます」
 爽やかな笑顔で頭を撫でられる。
「一人?」
「……はい」
 あれ。
 なんだかモヤモヤします。
 別に一人は普通なのに。
 初夏の熱気な降り注ぐ通学路が色褪せて見える。
「なら、一緒行くか」
 手を掴まれる。
「へ?」
 数珠ブレスレットを填めた大きな手。
 陸さんとはすこし違う。
 歩幅も。
 汗ばんでくる手に心臓が騒ぐ。
「あの、先輩」
「なあ、かんなちゃん」
 遮るように、岳斗先輩は言った。
 振り返って、足を止めて。
「付き合わん?」

 尚哉は低血圧で痛む頭を押さえながら学園に向かっていた。
 そして、目線の先に岳斗とかんなを見つけた。
 最悪。
 理由もわからずそう思った。
 朝から嫌なものを見たと。
 会話が聞こえないよう、足早に通りすぎるつもりだった。
 なのに。
 告白?
 尚哉は木の陰で固まった。
 ガク先輩、マジか。
 眼鏡を外し、眉間を揉む。
「返事はいつでも構わんよ」
「……はい。ありがとうございます。私……」
 マジだ。
 眼鏡をかけ直しながら歩き出す。
 聞かなきゃ良かった。
 は?
 なに考えてんだ。
 俺。
「くー、おはよう」
「マリケン」
 無神経な笑顔を掴んで引き寄せる。
 乱暴とか知らねえ。
「んぐ?」
「黙ってろ」
 そう呟いて学園に足を運ぶ。
 重いな、畜生。
 そんな二人が玄関に入り、階段に着いたところにこばるが鉢合わせる。
「よう」
「……こばる」
 尚哉は苦々しく会釈する。
 そして、思い立った。
 なんだろう。
 同族だからか。
 わかっていたから。
 こいつもだって。
 あのときの反応で。
「ガク先輩が松園かんなに告白したぞ」
「は?」
「え、ほんと」
 三人は踊り場で顔を見合わせた。
 数秒間の沈黙後に、チャイムが鳴り響いた。

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