もうLOVEっ! ハニー!
第9章 本性探し
五限は二十分後。
階段を上りながら英語で指名されませんようにと祈る。
細かい和訳を求めてくるのが嫌いです。
苦手ではないけれど。
「あら。ごきげんよう」
つばるが開いた扉から優雅に蘭が会釈する。
制服姿の先輩は金色の巻き髪が美しく流れ、腕に抱いたフランス人形を含めて一枚の絵画のように綺麗でした。
きっと何を着ても似合うのでしょう。
「ちょうどローズティの香りが完成したところなのよ。どうぞ」
カップを受け取って、つばると一緒にソファーに腰かける。
つばるはすぐにテーブルに置いた。
「蘭先輩しばらく席外してもらえねーすか」
「ちょっとつばる」
「別によろしくてよ。耳は沢山仕掛けてあるけどね」
ちらりと窓辺にならんだ小物を見て微笑む。
え。
まさか盗聴?
「ろくな先輩がいねえな」
「貴殿方一年生が一番の問題児揃いだと思うけど。バスケとバレーのスターお二人に、寮の王女。荒らしに荒らしてこれからどうするおつもりかしらね」
この人の話し方は不思議な圧を感じます。
「ここを使いたいと言うのだから、何か聞かれたくない話でもあるのでしょう?」
「錦岳斗の女性歴を教えろ」
「なっ」
「あらあら。かんなちゃんが告白でもされたのかしら。強力なライバルね」
カチャン、とカップから指を離してつばるを見据える。
どうして。
つばるといい、蘭先輩といい。
なんでわかるんですか。
「教えろ」
「それを知ってどうするつもり? 悪かったら? かんなちゃんは渡せないってプリンスにでもなりたいのかしら」
「後輩挑発して楽しいか」
「美弥も楽しいけれど貴方虐めがいがありそうだもの」
うわ。
隣のつばるからぶわっと殺気を感じる。
虐められていた張本人が言うのもなんですが、相当ご立腹です。
「へえ。俺を」
「中学までの猿みたいな交尾とは世界の違う快感を教えてあげましょうか、ナルシストちゃん」
帰りたい。
「そんなことよりっ、つばる! さっさと話を済ませようよ」
「錦と付き合うな」
「へあ?」
つばるは怒りで息を荒くしたまま乱暴に出ていった。
結局カップには口をつけぬままに。
閉まった扉をポカンと眺める。
「ふ、うふふ……あははは」
人形をギチギチと強く抱き締めて笑う。
「必死で可愛い。首輪着けてフィストで一晩中喘がせてみたい」
うっとりと。
「ななな……っ」