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もうLOVEっ! ハニー!

第9章 本性探し


 うちのクラスには華海都寮の生徒が三人いる。
 早乙女つばるは、入学式のバスケから一躍注目を集め、クラスの半分の女子が告白した。
 男子のうち二人も告白した。
 全員玉砕したらしいが。
 三鷹恭平は一目見たときから、つばるに嫌悪感を抱いていた。
 こいつ、ぜってーヤリチン。
 ただの勘だが。
 もう一人はクラスのアイドルになりつつある村山薫。
 バレーの時は可愛かった。
 サーブクイーンなんてあだ名つけて面白がってたっけ。
 それも二ヶ月もすれば変わる。
 たまに見える裏の顔が苦手だ。
 ほんの少し、会話に毒を混ぜる時だ。
 人を見下し慣れてる。
 いじめなどするタイプじゃないが、裏で操ることは得意。
 そんな感じ。
 前はときめいた笑顔も最近は怖く見える。
 そして、松園かんな。
「ちょっと来い」
 早乙女つばるが唯一自ら話しかけにいく女子。
 それに強気な目線で答えつつも、従順に従う姿は妙に嗜虐的で見入る。
 隣の席で二ヶ月。
 未だにどんなタイプと括れない。
 不思議な存在だ。
 まあ、あの裏寮に住むくらいだ。
 普通じゃないんだろう。

「松園、足どうかしたのか?」
 古典の授業中に尋ねたとき、松園は俯いて首を振っただけだった。
 曖昧に笑って。
 いじめ?
 そう考え出すと、もう考えずにはいられなくなっていた。
 女子と話す姿もあまり見ないので、口調もわからない。
 休み時間はどこかに消える。
 放課後なんて話しかける暇すらない。
 たまに見かけるのは上級生と一緒。
「謎だ」
「なんが?」
 前の席の富士励音が落書きしていたノートから眼を上げる。
 励ます音と書いて、れおん。
 時代だよな。
 ダブルスを組んでる仲だ。
 南国系の顔に焼けた肌。
「いや。また松園いねえなあって」
「ああ。松園さん? なんかいつもいねえな」
「励音はいつもいるのにな」
「暇ですから」
「おれのノートに落書きするほど?」
「見てみ。このネズミ上手く書けてね?」
「おれのが上手い」
 シャッシャ、と鉛筆で紙をなぞる。
 昼休みにテニス部の練習がないときは、大抵こうして励音と暇を潰していた。
「ほら」
「いんや。恭ちゃんのは可愛くないの。見てみ。この愛くるしさ」
「野郎が可愛さ拘ってどうすんだよ」
「あってめ。少女漫画家に謝れ」
 チャイムが鳴る。
 赤い顔の松園が入ってきた。

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