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もうLOVEっ! ハニー!

第1章 生まれ変わり

 端正な顔立ちとスポーツ万能に輪に掛け、主席で入学した奈己は毎日のように二ケタ以上の女子に追い回されていた。
 そこで亜季と関係を持っているふりをして、それらを追い払うことになった。
 同じく女子にもてるもののルカにしか興味のない亜季も、その効果に甘んじている。
「隆人とかわかってる上でオカマオカマうっせーんだよね」
「いいじゃないですか。なる先生に目をつけられるよりは」
 二人が目を合わせて息を吐く。
 お互い同じことを思って。
 あの女医だけには標的にされたくないと。
 すっと離れ、奈己が沸かしたお湯で紅茶を淹れる。
「砂糖は?」
「五つー」
 ポチャンと角砂糖が湯に沈む。
 ティーカップを受け取った亜季は思案顔で壁を見つめた。
「かんなちゃんねー……」
「気になります?」
「別に。ただなんていうか」
 そこで言葉を濁して紅茶を飲む。
 それを見ながら奈己は近づいた。
 二人で並んでベッドに座り、壁を眺める。
「随分と問題抱えてそうじゃない? 家族と学校と友人関係と」
「確かにね。入寮書類を見てきましたけど、なかなか刺激的な人生歩んできてますよ」
「ちょっと待って。どうやって見たの?」
 飲み干したカップを指に掛けて回しながら奈己が微笑む。
 意図に気づいて亜季がうな垂れた。
「問題だけは起こさないでよ」
「起こしませんよ。面倒ですし」
 九時を知らせるチャイムが鳴る。
 この時間以降は西エリアと食堂が閉鎖される。
 隆人も部屋に戻り、寮内は生徒だけが動く。
 けど、今日は違う。
「誰の部屋だっけ」
「こばるの部屋ですよ、歓迎会」
 二人はジャージだけ上から羽織り、外に出た。
 隣のルカも着替えて出てくる。
「十時には寝たいんだけど」
「肌の手入れとか大変だよね~」
「まあね」
 そっけなく答えたルカをじーっと目で追う亜季の頭が叩かれる。
 見下ろす奈己を睨みつけるが、すぐに前を向いた。
「わかってるよ」
「本当ですか?」
 不貞腐れた亜季が言い返そうとしたとき、かんなを中心に三人が現れた。

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