もうLOVEっ! ハニー!
第12章 騎士は王子と紙一重
「……てくれんか、かんな」
すぐに視線を戻した岳斗が何を見ていたかはわからない。
だが、隆人が教えてくれた。
「今の、村山薫だったね」
ぞくりとした肩を抱く。
岳斗と隆人は一瞬目線を交わし、それから私を見下ろした。
この二人の存在感は似ている気がします。
「望まない客って、彼女の知り合い?」
なんでこうも勘の良い人が多いんですか、この学園は。
「なんや? 隆にいは知っとるんか」
つまらなそうに唇を尖らせる仕草が似合わなくて、つい目を逸らしてしまう。
打ち付けていた踵も止まり、さっきまでよりも静けさが深くなったかのように思われる。
「うちの寮ってさあ、セキュリティがちゃんとしてるでしょ。ロックは寮生ごとにカードがあるし、カメラも四十八時間以上は録画されてる」
「隆人さん……」
靴箱の件も世話になったのに。
今回も迷惑を掛けてしまいそうで……
ぐいっと頭を抱き寄せられて、世界が傾く。
「ガク先輩?」
「おもんない」
「え」
「あははっ。男の嫉妬は醜いよ、ガク。それにそんな大した話じゃない。月末に華海都サークルでイベント開催すれば解決するよ」
「は? イベント?」
夜だというのに低血圧絶不調のつばるの顔を見つめて溜息が洩れてしまう。
「お前なあ……」
「つばる。一人でなんとかしようとしてた」
「一応な」
結局、サークルで天体観測をすることになってしまったのです。
事前につばるに訊いていた日に。
頭を押さえたつばるが扉にもたれかかる。
廊下には誰もおらず、つばるの部屋の前で二人で立っていた。
「この五日間何してたの」
「普通に学校に行ってただろ」
「勝見博也から連絡来たんですか」
ぐっと口をつぐんだ反応に大体察する。
「こういうときは湯浅じゃないのな」
「美弥先輩は……女性ですから」
にわかに大きくなった眼にぎくりとする。
睫毛が影を落とし、唇が持ち上がる。
ああ、だめ。
だめ。
違う。
そんな深い意味なんてないんですから。
「へえ」
またそうやって卑怯者。
手を組んで指を絡ませると、汗が滲んでいた。
「誰が……来るの?」
つばるが頬を人差し指で掻く。
「たぶん、勝見と安倍と櫻井と……その辺だろ」
怪我した頭部を一瞥されるのは気分のいいものじゃないです。
「お前は昼は出かけてろ。ほら、兄貴あたりと」