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もうLOVEっ! ハニー!

第2章 歓迎と予感

 華海都寮の寮室の形態は三つ。
 かんなや陸や美弥が入っているようなシングルタイプ。
 奈巳と亜希が同室しているようなダブルタイプ。
 そして最後の一つがこばるのような部屋。

「広いですねー!」
 入ってまず自然とこぼれてしまう台詞。
 後で隆人さんに尋ねましたが、十四畳あるらしいです。
 贅沢です。
 二十人は祐に入れるような間取り。
 更にキッチンも四畳ほど。
 これが一人部屋ですか。
 さっき私の部屋を羨んでいた人の住んでいる場所とは思えません。
 そんな視線に気付いたのかこばるが否定するように手を振る。
「誤解しないで、JCちゃん。オレの部屋はこういう行事の際に有無を言わさず、それこそオレが留守の時だって開放されるからこういう特別仕様なんだよ。陸みたいに疚しい本とか隠すような奴には住めないっつうか」
「阿呆な嘘言ってんなよ」
 慣れた素振りでキッチンから大量のコップと皿を持ってきた陸が毒づく。
 私は急いで運ぶのを手伝った。
 確か一年生が私を含めて三人。
 二年生が七人。
 三年生が美弥さんを除いて更に五人ですね。
 あと隆人さんになる先生。
 でもどう数えても十二人分しかないのですが。
「今日は美弥以外の三年は帰省から戻ってきてないんだ。あとは隆人となる先生とアニキの分で十二人。おっけー?」
「おっけーです」
 陸さんに従って長テーブルとキッチンのカウンターに配膳していく。
 しばらくすると汐里さんが入ってきて料理をよそい始めた。
 色とりどりのサラダにグラタン。
 キッシュにパスタ。
 チキンのグリルにサイコロステーキ。
 デザートには蕩けそうなプリン。
「ご……豪華ですね」
「おっ。嬉しいね。かんなお嬢さん。そんな笑顔見せられると作った苦労も消えるってもんだよ」
「汐里、お酒はないの?」
 遅れて入ってきた隆人と鳴海が当然の様に訊く。
「よく言うよ、これだけ未来ある若者を前にして」
「アニキも白々しいよ。たまにオレらにも内緒で飲ませてくれるくせに」
 小声で言ったこばるの頭を小突く。
「秘密を守れねえガキには飲ませてあげないぞ」
「悪かったって、いたいいたいっ」
 整えていたオールバックが乱れて顔にかかる。
 本当に綺麗な金色に染まってます。

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