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もうLOVEっ! ハニー!

第15章 何も叶えぬ流星群


 陸とモーニングに出てから一週間。
 なんとなく毎日一緒に映画を見ていた。
「こんばんわーい」
「今日も来たんすか」
 毎回同じ挨拶をして、十九時に部屋に入り、二十二時には自室に戻る。
 その間、かんなと遭遇することもなかった。
 風呂上がりのジャージ姿で二人並んでベッドに寝転がる。
 借りてきたビデオを一本ずつ見て、最後のひとつ。
 数年前にアカデミー賞を受賞したミュージカル。
 見たことはあったけど、もう一度見る価値のある作品だから、何も言わずに鑑賞する。
 過去にもしあの人を選んでいたら、のイフ恋愛ストーリーだ
「エリ先輩とはもう連絡取ってないの?」
 味塩ポテチを箸でつまみながら、陸がストーリーに感化されたように尋ねる。
「それゆう? まあ、三陸たちにも色々話が伝わっちゃってたよねえ」
 ポリポリと顎をかいて、どこまで話そうか悩む。
 正直エリのことはこの三ヶ月薄れていた。
 かんなとの日々が忘れさせてくれていた。
 夏休みに入る直前、岳斗の告白を噂で知って、あまりの勝ち目の無さに勝手に失恋気分に向き合っていたから、過去の恋愛が引き出しから飛び出してくる。
「んー……連絡はとってないよ。ネットもやるような子じゃないし、まあやっててもアカウント知らないし。大学どこ行ったかは正直知ってるけど、追いかけようとも思わないかな」
 陸の手に持つ袋からポテチをひとつ抜き取る。
 食べようとした手を掴まれて、むっと睨むと、陸が真剣な眼差しで見つめてくるから笑いがこぼれる。
「なに、ダメなら返すよ」
「今先輩の心に穴があるなら、俺が代わりに埋められたりしない?」
「ひゃい?」
 指から力が抜けてポテチが落ちる。
 あーあ。シーツが。
 それでも陸の力は緩まない。
「なにか勘違いしてないかにゃ? ボクはキミと同じ性的志向だよ?」
「別に今すぐ恋人にしてって頼んでるんじゃなくて。傷心者同士なんとなく時間を潰し合ってるのもわかってる。ただ……」
 映画がクライマックスを迎える。
 ああ、そうだよ。
 過去の恋愛は美化されるもん。
 エリとのイフなんて幾つ考えたか。
 でも上手くいかなかったから、決して混じり合わなかったんだ。
 陸の手を外そうともう片方の手をかけた瞬間、大きな手で引き寄せられる。
 咄嗟に唇をガードした。
 拒絶に陸の力が弱まる。
 数秒時が止まる。

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