もうLOVEっ! ハニー!
第17章 深い底まで証を
「もぅ、や……だっ」
何度謝っても、懇願しても答えてもらえない。
足の指を舐められ、後ろの穴に指を入れられ、喉に指を突きつけられ、果てしないほど行為が続けられる。
終わったのは三時間後で、涙も枯れてからだった。
濡れたタオルで身体中を拭いたあとに、天気の話でもするように次の約束を取り付けられる。
「明後日は朝六時に屋上に来て」
起き上がる気力をなんとか絞り出し、着てきた服に身を包む。
「いつ……解放してくれるんですか」
なんとか言葉が紡げるようになってから尋ねる。
清龍は笑って首を振った。
「卒業までじゃないか」
絶望のままに扉の前で項垂れて、なんとか足を踏み出し階段に向かおうとすると、背後から扉が開く音がした。
なんとなく振り向きたくなくて、足を早めようとすると肩を掴まれた。
感触で誰かわかった。
「お前、連日何しに来てんの」
つばるだった。
緩い黒の半袖とステテコ姿で。
「気にしないでください……」
手を振り払って進もうとするも、隣に並ばれて顔を覗き込まれてしまう。
「ひでえ顔してるぞ。見られてないとでも思ってんのか。なあ、なんで峰先輩の部屋にいたんだよ。付き合ってんのは別だろ」
そうですよ。
別ですよ。
こんなのおかしいですよ。
どれも言葉にならずに階段を下りる。
踊り場でつばるが腕を掴んだ。
「おい、バレねえとでも思ってんのか」
「な、にが」
「その顔見て浮気だとは思わねえよ。脅されてんだろ。俺の部屋にまで変な音聞こえてきてんだよ。今まで静かだったのに」
何の音が聞こえると言うんでしょう。
足元から鳥肌立つ。
「つばるには、関係ない」
「じゃあ、ご自慢の彼氏に助け求めろよ」
「事情も知らずに!」
剣幕につばるが手を離す。
「……口挟んでくるんじゃねえですよ」
「んだそれ。現状維持でいいのかよ」
「……良くないですよ」
「誰か助けてって思ってんじゃねえの」
どうして、この人は。
こんな時だけ距離を詰めてくるのか。
「あなたにだけは、助け求めないので」
つばるはそれ以上追いかけてこなかった。
拒否しておいて、心が寂しく叫んだ。
降りていくかんなを見送りながら、つばるは誰にも届かぬ声で呟いた。
「お前はもう、幸せになるんだろうが」
苛立たしく髪を掻きむしってから、自室に戻った。