もうLOVEっ! ハニー!
第18章 砂の城を守って
固くなっているのがお腹に当たって、心臓の鼓動が早くなる。
でも、岳斗はキス以上に進めなかった。
額を合わせて、荒い息を互いに聞きながら。
手を下腹部に伸ばすことも無く、互いの唇の柔らかさに溺れるように重ね合わせた。
それがなんだか、とても必要な時間だった。
「明日は三回戦やな」
ハグをしたまま、穏やかな声に目を閉じる。
「練習できてますか」
「出来とらん……勝つけどな」
ふふふ、と笑い合う。
どこまで勝ち上がるんだろう。
一回戦に比べると、二回戦は大差で圧勝した。
「一位になっちゃうかもしれませんね。そしたら全国大会ですか」
「したら、地方ブロックやね。そのあと全国。受験勉強に集中すんのが遅くなるわ」
「岳斗さんは、どういう大学に行くんですか」
そういえば、気になっていた。
「せやなあ……決めかねててん。文系かなとは思っとるけど、経済だの民俗だの、法学……しっくりこんのよね」
「うわあ、二年後かあ」
コン、と額を小突かれる。
「俺の話ちゃうの?」
「不安になりますもん……」
「もしかしたら就職するかもなあ。そん時はかんなの家庭教師を副業するわ」
「脳の出来が違うのでちょっと……」
期末テストの順位を思い出して、げんなりする。
「かんなは、俺がどんな仕事向いとる思う?」
「モデルですよね」
「んははっ即答やん」
「いえ、本気ですよ。学園の中でも目立つスタイルで、ファッションセンスも高くて……そうだ、ルカ先輩にオーディションのツテとか当たってみたらどうですかね」
「ちょ、本気にせんといて」
現実味を帯びた提案に焦って手を振る岳斗。
でも私はワクワクしてしまった。
「名案じゃないですか! 芸能界って怖いところのイメージですけど、ルカさん馴染みの雑誌とかなら、きっと守ってくださる気もしますし 」
ぽんと頬に手を乗せられる。
「落ち着き」
「ごめんなさい」
「嬉しいけどな。服飾系も考えたんよ。服が好きやし、自分で作れたら楽しそうやなって。でも進路指導と担任にはもっと上行け言われててな」
成績が優秀だと、それはそれで選択肢が狭められてしまうかもしれませんね。
「あと一年遅く生まれてたらな……」
「えっ」
「かんなともう一年長く過ごせたんに」
それは夢のようなイフの世界。
私も力強く頷いてしまいました。