もうLOVEっ! ハニー!
第18章 砂の城を守って
時刻は二十二時半。
明かりがついていたので、司かと思えば汐里が中で調理をしていた。
「おう、ガクか。酒でもくすねに来たか」
「エスパーなんか」
「顔見りゃわかるよ。寝れねえって言ってる」
カウンターにもたれるように座り、慣れた手つきで野菜を切る汐里を眺める。
三年になってから、教師以外に年上と関わる機会が急激に減った。
そんな中で、隆人と汐里は貴重な存在だ。
冷えたカウンターに腕を組み、調理の隙ができるまでぼんやりと待った。
まな板の野菜を鍋に入れ、調味料を振りかけてから弱火にし、グラスと缶ビールを持って戻ってくる。
「なるには秘密だぞ」
「ウイスキーのがええんやけど」
「生意気言わねえの」
注がれた泡が消えるまで眺めてから、二口ほど飲んで苦味に舌を委ねる。
汐里は頭に巻いてた白いバンダナを外して、隣に腰かけた。
ニコリと笑って背中を叩かれる。
「どうしたよ、元気ないな。まあ、親友が入院中となりゃ、明日の試合に気持ちが向かねえか」
よく見抜く。
「せやね。あんな、相談てほどでもないんやけど……大事な人が嘘ついとるのを見抜いたとして、それを聞くんは野暮よな 」
「おっと。ウイスキーが要りそうな話題だな」
「せやから持ってきてって……」
「バカ、明日試合だろ。酔っ払わせて負けたら顔向けできねえよ」
「大人や……腹立つ」
明るく笑ってから、神妙な顔で顎を掻く。
「そうだなあ、聞きたくて仕方ないんだよな。それがこれから相手との未来に関わることだったら、我慢できなくなるかもな」
「けどそれ聞いて、縁が切れるかもしれんかったら」
「墓場まで持ってくな」
予想通りの答えに項垂れて、大きく息を吐く。
「試合勝ったら、潰れるほど飲ませてや」
「ダメだろー。それでうんって答えらんないだろー。生活に支障出まくりなことに直面してんだな。お前は顔に出さねえし、成績もスポーツも維持しちゃういい子だからなあ」
「親友の悩みひとつ気づけんドアホや」
残ったビールを一気に飲み干す。
ああ、めんど。
めんどいな俺。
大人にまで迷惑かけとる。
すかさずピッチャーの水を注がれる。
一杯でやめとけと。
「ガクはなあ……真面目だからな」
「それ褒めとらんやろ」
「不真面目飲酒不良だからなあ」
「手のひら返すんやめて」
余裕な対応がありがたかった。