もうLOVEっ! ハニー!
第18章 砂の城を守って
会場の脇の廊下を早足で抜けて、参加校四組ごとに割り当てられた控え室エリアに出る。
尚哉が手を引き、目当ての部屋にたどり着く。
入口からそっと中を見ると、四十人ほどの選手たちがワイワイと作戦会議をしてる。
その中でマリケン先輩の大きな背中と、ガク先輩を見つけました。
尚哉が合図をすると、賢が手を振る。
「よし、行こ」
男性陣の中を通り抜けるのはハラハラしますが、見知った顔に向かって意識がブレないように。
だって肘が当たるだけで他人が怖い。
目の前で手が離れると、恨めしそうな声が降る。
「なぁんで、くーが一緒なん」
「ひとりじゃ迷う後輩のためですけど」
バチンと。
短い火花が散る。
尚哉はこばると話す、と言い残して賢の元にスタスタと歩いて行った。
隣の岳斗を見上げると、少し具合が悪そうに頭に手を当てていた。
「あの、体調大丈夫ですか」
「んー……」
しばらく迷うように唸ってから、手を握られた。
尚哉さんより強い力。
「監督! ミーティングまでには帰りマース」
「おい、ガク! 七分で戻れよ」
ひらひらと手を振って、監督たちから離れる。
少し静かな廊下から、階段を上って人気のない倉庫のような空間に着く。
恐らく、用具入れなのでしょう。
前回の木立の中とは違う暗さに、少々緊張してしまいます。
「なあ、かんな」
振り向かずに。
手だけはぎゅっと握って。
「俺、思ってたより嫉妬深いかもしれん」
「え……ガク先輩が?」
振り向いた顔に、言葉が続けられない。
凍てつくような視線に体が強ばる。
岳斗はゆっくりと手を伸ばして頬に触れた。
それはそれは優しく。
温かく。
「今日だけは、くーとのツーショは見たなかった」
いつもより低い声は、まるで心の内から苦しみながら漏れ出す本音のようで。
足先がゾワゾワする。
「で、でも、本当迷わないようにって……」
頬から手が移動して首を撫でられる。
ビクッと反応してしまう。
「わかっとるよ」
喉元を包み込むような手のひらが鎖骨で止まる。
親指で骨のラインをなぞられて、首をすくませる。
くすぐったい。
「わかっとるつもり……」
声の波が鼓膜にぶつかり、黒い渦を巻いてく。
もう一度首元に上がった手が、今度はしっかりと喉を掴んだ。
っく、と呼吸が一瞬止まる。
「冷静にな」