もうLOVEっ! ハニー!
第2章 歓迎と予感
その朝、突然内線が鳴った。
通知を見ると弐〇壱号室。
この真上。
こばるさんの部屋だ。
急いで取りながら時計を確認する。
午前七時。
朝食にはまだ早い。
どうしたんでしょう。
「も、もしもし。おはようございますっ」
「あっ。おはよう。JCかんなちゃん。ちょっと今いいかな」
「はい」
アセアセと髪とパジャマを整えながら答える。
相手には見えないのに。
「ごめんね。こんな朝早くに。実は今日来る新入生について伝えなきゃかなって思ってさ」
頭の中に疑問詞が浮かぶ。
隆人さんならともかく、どうしてこばるさんがそれを?
違和感を覚えながらとにかく頷く。
「今日来る二人のうちの一人がさ」
「はい」
「その……かんなちゃんには言いにくいんだけど。伝えなきゃと思ってさ。その一人ってのは」
あ。
なんでしょう。
ビリッて。
電気が走ったような。
そんな、予感。
いや、確信?
首筋が強ばる。
足先まで冷たくなる。
瞬きもせずに固まる。
「はい」
「早乙女つばる。わかると思うんだけど、オレの弟なんだよね」
電話を切ってからしばらく動けずにいた。
ぱたんとベッドに倒れて布団にくるまる。
眠気は来なかった。
頭が急速に冷えていく。
この楽しかった一週間も消えていく。
早乙女つばる。
消えたはずの私の過去。
あの中学。
あの日々。
きっとそれを伴ってやってくる。
彼が。
頭が痛む。
ああ。
きっとあの怪我のせい。
櫻井柚に投げられた鉛筆削りのせい。
ふと、思い出した。
布団から抜け出て、持ってきた荷物を探る。
あった。
あの日、卒業式の日、つばるに渡されたハンカチ。
血は綺麗に落とした。
返す宛なんてなかったけど、置いてこれなかった。
まさか、本当に会うことになるなんて。
ハンカチを握り締める。
潰すくらい。
力強く。
―オレも今朝知ったんだ。隆にいから電話が来て。かんなちゃんに伝えるかは任せるって言われたんだけど、言うべきかなって思って―
「早乙女……つばる」
私のことを、バカんなではなくクズと呼んでいた男。
あのクラスのリーダー。
世界が暗転していく気がした。
通知を見ると弐〇壱号室。
この真上。
こばるさんの部屋だ。
急いで取りながら時計を確認する。
午前七時。
朝食にはまだ早い。
どうしたんでしょう。
「も、もしもし。おはようございますっ」
「あっ。おはよう。JCかんなちゃん。ちょっと今いいかな」
「はい」
アセアセと髪とパジャマを整えながら答える。
相手には見えないのに。
「ごめんね。こんな朝早くに。実は今日来る新入生について伝えなきゃかなって思ってさ」
頭の中に疑問詞が浮かぶ。
隆人さんならともかく、どうしてこばるさんがそれを?
違和感を覚えながらとにかく頷く。
「今日来る二人のうちの一人がさ」
「はい」
「その……かんなちゃんには言いにくいんだけど。伝えなきゃと思ってさ。その一人ってのは」
あ。
なんでしょう。
ビリッて。
電気が走ったような。
そんな、予感。
いや、確信?
首筋が強ばる。
足先まで冷たくなる。
瞬きもせずに固まる。
「はい」
「早乙女つばる。わかると思うんだけど、オレの弟なんだよね」
電話を切ってからしばらく動けずにいた。
ぱたんとベッドに倒れて布団にくるまる。
眠気は来なかった。
頭が急速に冷えていく。
この楽しかった一週間も消えていく。
早乙女つばる。
消えたはずの私の過去。
あの中学。
あの日々。
きっとそれを伴ってやってくる。
彼が。
頭が痛む。
ああ。
きっとあの怪我のせい。
櫻井柚に投げられた鉛筆削りのせい。
ふと、思い出した。
布団から抜け出て、持ってきた荷物を探る。
あった。
あの日、卒業式の日、つばるに渡されたハンカチ。
血は綺麗に落とした。
返す宛なんてなかったけど、置いてこれなかった。
まさか、本当に会うことになるなんて。
ハンカチを握り締める。
潰すくらい。
力強く。
―オレも今朝知ったんだ。隆にいから電話が来て。かんなちゃんに伝えるかは任せるって言われたんだけど、言うべきかなって思って―
「早乙女……つばる」
私のことを、バカんなではなくクズと呼んでいた男。
あのクラスのリーダー。
世界が暗転していく気がした。