もうLOVEっ! ハニー!
第19章 友情の殻を破らせて
その朝は小鳥のさえずりで目が覚めました。
いつもより沢山語った翌日は、なんだか顔がほぐれてる気がして、着替えながら思い出し笑いしつつ、朝食を食べに行く。
扉を開けて、鍵を閉めていると、隣の部屋から美弥が出てきた。
でも一瞬、誰かわからなかった。
「あ、おはよん。かんな」
手を挙げて微笑む。
いつも腰まで揺れていた髪が、鎖骨までになっていたのだ。
言葉が出てこなかった。
「食堂行くでしょ? おいで」
足だけは何とか動いた。
横に並ぶと、あまりの変化にまじまじと見てしまう。
「み、美弥さん。髪、切ったんですね」
両手で掬うように髪をすいて、ニコリと。
「うん。ドネーション? 髪を寄付するやつ、やってきたんだ。ミディアムなボクも最高でしょ」
似合ってはいるが、今までのイメージがあまりに強かったので見慣れない。
ヘアオイルの香りも変わった気がする。
食堂に入ると、案の定汐里が驚きの声を上げた。
「見違えたな! 男前じゃないか」
「しーちゃんのそゆ褒め方すき」
朝食はドライカレーライスとサラダとヨーグルト。
先に食べていた茜と蘭が手を振る。
「あらあら、失恋かしら仔猫ちゃん」
「えっ、美弥マジで! 思い切ったね!」
「ちーがーうー。色恋脳のキミら不憫よ。不憫」
三人が並んだので、端で食べていたこばるの隣に腰掛けることにした。
相変わらず赤いヘアゴムで金髪をいくつも縛ってまとめている。
「おはよ、かんなちゃん。夏休み中はお見舞いありがとね。つばる毎回喜んでたよ」
もう食べ終わりそうな様子。
「本当ですか? 特に後遺症なさそうで良かったですね。退院も早まるかもですよね」
「うん。ただまあ、あとから記憶照らし合わせたら抜けてましたってこともあるし、油断はできないけどね。事情聴取もストレスかかっただろうし、まだまだ大変だよアイツ」
ふたりが並んでいたのが遠い昔のよう。
こばるは水を一気に飲み干した。
「兄貴! ご馳走様! かんなちゃん、始業したら放課後とか来るのもムズいし、何かあったらオレがいるからあんまり気にしすぎないでね」
「はい。快方に向かうのを祈ってます」
立ち上がって口を拭いながら、こばるが付け加えるように言う。
「あ、でも休日来てくれる時は声掛けて」
「そうしますね」
笑顔で出ていった。