もうLOVEっ! ハニー!
第20章 秘密のシャーベット
「ははははっ、元気だねえ、みんな。本当は夕飯どっか奢ってあげたいけど、咎さんと飲みに呼ばれてるからさあ。また結果連絡と次の撮影の機会だね」
何も知らない大人が場を和ませる。
でも、でも、視線は逸れたけど背中を見てわかります。
今しがたの会話の意味を問いながら、多少の苛立ち。
今日は最高の撮影の日なのに。
どうして最後に爆弾土産を。
「はい、とうちゃーく。錦くん、本番データは送れないけど、今日の候補の中では間違いなく君がトップだったよ。あとは六番の子が競ってたかなあ。咎さんも声デカかったしなあ。あ、何かあったらルカちゃんに連絡するね。君とは契約時に連絡先交換できると嬉しいよ。じゃあ、バイバイ」
全員降りたあと、発車するまでマシンガンでした。
アンナとルカはコンビニに寄るとのことで、いきなり二人きりです。
「帰ろか」
そのシンプルな言葉に、そっと手を差し出すと、優しく握ってくれました。
ああ、この人はあんなに遠い場所で生きているのに。
触れ合うことがなくなるのはとても怖い。
でもこれが恋愛感情だけでないのは自覚してる。
家族に感じる安心感のようなものを重ねてる。
だから大会の時に尋ねられた、好きの在り処。
そんなことを思い出して窮地の現実を見て見ぬ振り。
「いやー……一生分褒められた気がするわ」
「凄かったですよ。もの凄く格好良かったです」
「咎さんとあの後も話したんやけど、撮影終わってんのに腕とか背中とかいちいち褒めてくんの。どんな顔したら正解かわからんくて。んー、でも楽しかったなあ」
本来ならワクワクとした予感と感想会なのに。
アンナの投げたアリス爆弾が、場を不穏なままにしています。
結局核心を話すことなく、着いてしまいました。
ホッとしたような、もどかしいような。
でも寮の玄関で靴を脱いでから、耳元で囁かれました。
「俺の部屋おいで。さっきの話、確認したいわ」
ゾワっと首筋が縮み上がる。
いつもは人目を避けて、一階端の私の部屋なのに。
階段を登りながら、何を聞かれるのかと心臓が騒ぐ。
足音二つの時間が気まずい。
二◯九号室は、壱◯一の対角の隅にあった。
誰にもすれ違わなくて安心していたら、背後でドアが開く音がした。
「やー、いい曲できたな」
「まじサンキュ」
賢と尚哉の視線が合わさるようにこちらを向いた。