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もうLOVEっ! ハニー!

第3章 追いかけてきた過去


 一人、また一人と部屋に入っていく。
 もう、数メートル先には早乙女つばるがいる。
 そこで、みんなに歓迎されている。
 心臓がバクバクと鳴っている。
 逃げ出したい。
 今すぐ階段を降りて、自分の部屋に篭もりたい。
 何もかもから目を逸らしたい。
 でも……
 なんで、私が逃げなきゃいけないんだろ。
 そんなことも湧いてくる。
 私はもう、十分耐えた。
 あの三年間を耐え切った。
 やっと得た、新しい生活。
 それをどうして彼のために失わなきゃいけないんだろう。
 そう思うと、勇気が湧いてきた。
 ええ。
 そうですよ。
 もう、私は新しい私なんです。
 それに……
 こばるさんだって、向き合ってるんです。
 肉親に。
 美弥と一緒に恐る恐る中に入る。
「やっときたみたいだね。彼女が君らと同じ新入生だ」
 隆人さんの落ち着いた声。
 君ら。
 そうだ。
 二人いるんだった。
 もうひとりは、誰なんでしょう。
 痛いほど抵抗する首に力を込めて顔を上げる。

 人って、記憶に弱い生き物ですね。

 戦慄した。
 一週間前から何も変わってない。
 短い黒髪に、ピアス。
 鍛えた体。
 鋭い目。
 早乙女つばるがそこにいた。
 私を見て、視界に捉えて、認識して、少しだけ目を見開く。
 細い眉を釣り上げて。
 あの日。
 あのハンカチを渡した時とはまた違う表情。
 そんな顔、するんですね。
「お互い自己紹介してもらおうか」
 そして、もうひとり。
 奥からおどおどと小柄な少女が現れた。
 ああ。
 彼女は、私の過去ではない。
 未来の存在だ。
 少しだけ、ほっとした。

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