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もうLOVEっ! ハニー!

第5章 悪戯ごっこ

「にゃ? 一回取り上げといてご褒美するスタイルかにゃ? これは好きにしていいっていう」
「違うよ。かんな、朝から具合悪いって汐里からも報告来てるからさ。入学式までは美弥によろしく頼もうと思ってね」
 少し不満げな陸に美弥はウィンクをする。
 それから私の手を握って隆人に敬礼した。
「りょうかーい。ナイトに任せてにゃー」
「ありがとうございます」
 階段を上る前に振り向くと、まだ薫が陸の体に密着していた。
 すり寄るように。
 甘えるように。
 獲物を逃がさないように。
 肉食系女子ってああいうのをいうんですか。
 ぼーっとそんなことを考えながら段を上った。

 部屋に戻ってベッドにぼふんとうつ伏せになる。
 陸さんの気遣いはうれしかったですが、蘭先輩に取り付けられた明日のお茶会が憂鬱で仕方ありません。
 伸びをして天井を見つめる。
 シーツが冷たい。
 春なのに部屋が寒い。
 暖房つけようかな。
 起き上がる。
 ギシ。
 たったそれだけ。
 ベッドがほんの少し軋んだだけ。
 なのに……
 全身が鳥肌立って視界が揺れる。
 じわりと汗が滲む。
 痛い。
 頭が痛い。
 あの男に掴まれた手が痛い。
 痛い。
 ぺたんと床に腰を落とす。
 ガクガク腿が震えてる。
 ああ。
 嫌です。
 弱いかんなは嫌いです。
 ポーン。
 あ。
 チャイム?
 ぞわっと首の後ろに寒気が走る。
 今度はちゃんと、確かめてから開けましょう。
 そろそろと扉に近づく。
 耳を当ててじっと待つ。
 コンコン。
「松薗かんなちゃーん? 三年の長谷茜だけど」
 誰でしょうか。
 蘭が校舎で言っていたことを思い出す。
 ゆっくり扉を開く。
「あっ。ごめんね、押しかけちゃってー。アタシ今日ここに戻ってきた三年の茜っていうんだ。歓迎会には参加できなかったから顔見たくってさ。かんなちゃんだよね。かんちゃんでいーい? アタシは茜でいいから。そうそう三陸に聞いたんだけど美弥に目つけられてるって? 二代目エリちゃんてことかあ。あ、アタシの部屋は二〇七号室だからいつでも遊びに来てね」
 つらつらと流れてくる言葉に反応する間もない。
 茜は栗色の髪のショートカットで、くちゃくちゃと何かを噛みながら話していた。
 一瞬吸盤みたいなのが見えたから、するめでしょうか。
 じーっと見つめられてつい萎縮してしまう。

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