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もうLOVEっ! ハニー!

第5章 悪戯ごっこ

 カチカチ。
 時計を見つめて清龍は力なく身を横たわらせた。
 さっきまで眺めていた携帯の着信履歴。
 松園めい。
 別れて三年、ずっとそのページから消えたことの無い名前。
 毎週一回必ず。
 今更何を話したいのかもわからない。
 いや。
 きっと俺は怖くて見ないふりを続けているだけなんだろう。
 彼女の異常なまでの愛情表現に耐えられなくなって逃げ出してしまったから。
 わざわざこの寮に来たのも彼女から逃れるためなんて。
 低い声で清龍は嗤う。
「馬鹿ばっかだ……」
 まさかその妹がこの寮に入るなんて。
 まだ覚えているあの日の快感。
 幼すぎる体に刻んでしまった暴行。
 罪悪感と背徳感と、脳を麻痺させるほどの高揚。
 初めに見たのは彼女の家に招かれたとき。
 リビングのソファで足をぶらぶらさせながらテレビを見ていた少女。
 あの頃は小学四年だったはずだ。
 めいの部屋に入ってからも帰宅してからも網膜から消えなかった横顔。
 無垢で、それでいて残酷なほどに世界に無関心なかんな。
 随分早くに自分の世界以外を排除する方法を身に着けてしまった少女。
 そんな空気に堪らなく惹かれた。
 自分を認識してくれたらそれでよかった。
 それがあんなことになるなんて。
 抑えきれなかった未熟な性欲に未だに頭痛がする。
 今更言えるわけもない。
 あれだけのことをしておいて。
 彼女にとって唯一の姉まで傷つけてしまった。
 それも彼女と別れるための口実にまで利用して。
 つくづく最低だ。
 けど、まだ惹かれてる自分がいる。
 愚かで仕方ない。
 唇をなぞる。
 あのときはキスはしなかった。
 そんなこと覚えているはずもないだろう。
 ああ、くそ。
 頭痛えな。
 自業自得だし。
 ガクあたりにばれたら殺されそ。
 ごろんと寝返りを打つ。
 本当バカ。
 胸が苦しくなって身を起こす。
 頭をがりがり掻きながら深く息を吐いた。
 ああー。
 好きだ。
 めいがちらつかなければさっき襲っていただろう。
 屑。
 ダメだ。
 同じ寮であと一年。
 耐えきれるかな、俺。
 カチカチ。
 時計を見て目をくるくる回してみる。
「……寝るか」

 十六人の生徒を抱えて寮の夜は更ける。

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