どこまでも玩具
第8章 任された事件
目を覚ます。
布団を引き寄せ、朝の寒さを凌ぐ。
周りを見回すが、誰もいない。
ここは、どこだっけ。
カチカチ。
六時か。
モゾ。
脚を摺り合わせる。
Tシャツ一枚で、下着も付けてない。
なにがあったんだっけ。
上を見て、思い出す。
「あ……あぁあ」
昨晩の行為が。
彼の言葉が。
自分の声が。
全部が蘇る。
ガバリと布団に突っ伏す。
信じられない。
あれが現実なんて。
あれが昨晩なんて。
もう涙は出ない。
静かに布団を抜け出す。
シーツの乱れを見たくないから、真っ直ぐリビングに向かった。
チラリと覗くと、白い煙が見える。
その下には、煙草をくわえた類沢が座っていた。
胸が疼く。
朝日を浴びる横顔を眺めて。
なんで。
なんで、あの眼は濁ってないんだろう。
だから、信じてしまう。
乱暴に抱かれた後なのに。
ソファから立ち上がった類沢が、俺を見つけた。
煙草を灰皿に押しつけて歩いてくる。
「まだ寝てて良いのに」
「……」
「暖かいのでも飲む?」
「要らない、です」
しかし類沢はコーヒーを二つ淹れて来た。
手渡され、受け取ってしまう。
ズズ、と音が鳴る。
美味しい。
「……もう少し、休みますね」
「それが良いんじゃない」
カップを片付けた類沢が、俺の背をそっと押してベッドに誘う。
布団を頭まで被り、窓を見る。
類沢はまたすぐに出て行った。
無音だ。
身を起こす。
あれから何分経ったんだろう。
七時。
リビングに出ると、朝食の横にメモが置いてあった。
―召し上がれ―
出掛けたのだろうか。
俺はメモを握りつぶした。
食欲もない。
ラップをされた綺麗な朝食を眺める。
やっぱり料理、上手い。
あの時も、自分のために作ってくれたんだっけ。
寝室に戻り、類沢のタンスを漁る。
どれも大きいが、Tシャツとズボンを借りる。
下着は流石に借りれない。
自分の下着を探すと、ドロドロに濡れていた。
昨日は脚までズラされ、そのままされたんだった。
洗面所で洗うが、中々落ちない。
その間はズボンをそのまま穿いていた。
干して、リビングに戻る。
後で取らなきゃ。
ソファに寝転がる。
うつ伏せで。
ふかふかだ。
眠れそう。