どこまでも玩具
第11章 立たされた境地
アカの一件から一週間が過ぎた。
自首したお陰で、父親は懲役二年で済んだらしい。
それでいいのか。
尋ねた俺に、アカは曖昧に笑った。
―生きてれば、まぁいいんだ―
そろそろ冬休みだ。
センターまであと一カ月。
「今はやるしかないんだからな。遊ぶ馬鹿は見捨てるからその気でいろ。代わりに頑張ってる奴には全力でサポートする」
学年主任の如月先生の挨拶を最後に、学年集会が終わる。
「瑞希ー、進路決まったか?」
「まだ」
「マジかよ」
金原が大袈裟に驚く。
「え? 金原決まったの」
「一応はな。経済系に行きたいかなぁって」
「似合わないね」
「ちょっ、アカ。ふざけんな」
赤髪を切ったアカは、少しだけ前より明るくなった。
耳元に癖がまだ残る髪。
卒業したら染め直すと云っている。
黒髪のアカ。
見てみたい気がする。
「そういうアカはどこ行くんだ」
「おれ? おれは……就職だよ」
「マジで!」
今度は俺も叫んだ。
「そ、そんなに驚くことじゃないじゃん。びっくりしたぁ」
「どこだよ? コンビニじゃ正社員なっても厳しいんだぞ」
「なんの話だよ。携帯会社の開発部門にね、ちょっと推薦枠があるらしくてさ」
「携帯会社?」
「金属と機械には詳しいから」
「あぁ……」
俺はアカの七つ道具を思い出す。
「なに、みぃずき。その顔は」
「いやっ、お似合いだなって」
生徒の波が止まる。
ざわざわとみんなが窓を指差した。
「おっ?」
「わぁ、雪だ」
白い花びらがチラチラと。
そうか。
もう、雪が降る季節なんだ。
十二月の半ば。
余りに色々ありすぎた。
季節に置いていかれてる気がした。
冬休みは実家に帰ってみようかな。
勉強も大変だけど、美里と年越したいし。
そんなことを考えながら、図書室を出る。
毎日籠もっている。
目標も決めないまま、勉強だけ。
こんなんでいいのかな。
でも、お金かかるから大学は難しいし。
奨学金の申し込みも殆ど締め切ってしまった。
なにになりたいんだろう。
ぼんやり考える。
ガラッ。
「失礼します」
「元気ないね」
白衣を着た類沢が微笑む。
仕事が終わったんだろうか。
窓際で本を手にしていた。
「先生は、元気ですか?」
「生徒が元気ならね」
ズルい返しだ。