どこまでも玩具
第1章 現れた白衣
「はよー……」
「よぉ、瑞希! 朝から元気ねぇな」
俺は親友の金原を見て溜め息を吐く。
長い夏休みが終わり、今日から始業だ。本格的に受験期に入る。
「金原は良いよな。もう推薦決まってて」
「オレだって苦労したっつの」
チャイムが鳴り、二人は駆け足で教室に向かった。
焼けた顔。
恋した顔。
憂鬱な顔。
休み明けは皆様表情豊かだ。
クラスメートをぼんやり眺めながら、担任が来るのを待つ。
金原は最近出来た彼女の元に行った。
受験合格にリア充か。
羨ましいな。
ざわざわ。
眠くなって、机に突っ伏す。
ざわ……ざわ。
夏休みが永遠に続けば良かったのに。
勉強が壊滅的な自分にとって、受験期の学校など拷問場に等しい。
キーンコーン……
「離退任式を行います。生徒は講堂に移動して下さい」
離退任式?
クラス中に疑問詞が溢れる。
この時期に?
まさか担任が替わるのか。
迷惑以外に何者でもない。
「瑞希ー、行こうぜ」
シューズをくるくる回しながら、金原が言った。
講堂。
何かと予算をかけるうちの学校は、市民ホール並みの講堂を作った。
正直な感想、権力の象徴にしか思えない。
音響装置が至る所に散りばめられ、ライトは三方向から調節できる。
さらには座席数だ。
全校生徒が五百満たないと言うのに、何故千を超える椅子があるのか。
「瑞希ー! 先に座れや。お前が奥なんだから」
金原に促されて、ゆっくり腰を下ろす。
すぐに辺りは静まり返った。
「えー、只今より……離退任式を始めます。始めに離退任される先生方の紹介からさせて頂きます」
俺は眠る姿勢に入る。
どうやら事務と保健室の養護教師が替わるだけらしい。
関係ない。
「……類沢雅です」
ざわざわ。
え、今聞き間違いじゃないよな。
「養護教師を勤めさせて頂きます」
女子から黄色い悲鳴が漏れる。
類沢雅。
まるで芸名かと疑う、美しすぎる響きと、それに見合う容姿。
肩までの髪をポニーテールのように一つにまとめている。
「三年は受験ストレスもあるだろうから……休みたい時はいつでも来て下さいね」
なんだろう。
何か、胸がざわつく。
類沢はニコリと笑って下がる。
一言で表せば
妖艶。
その視線に捕らわれるのが妙に怖くて、俺は目を伏せた。
「よぉ、瑞希! 朝から元気ねぇな」
俺は親友の金原を見て溜め息を吐く。
長い夏休みが終わり、今日から始業だ。本格的に受験期に入る。
「金原は良いよな。もう推薦決まってて」
「オレだって苦労したっつの」
チャイムが鳴り、二人は駆け足で教室に向かった。
焼けた顔。
恋した顔。
憂鬱な顔。
休み明けは皆様表情豊かだ。
クラスメートをぼんやり眺めながら、担任が来るのを待つ。
金原は最近出来た彼女の元に行った。
受験合格にリア充か。
羨ましいな。
ざわざわ。
眠くなって、机に突っ伏す。
ざわ……ざわ。
夏休みが永遠に続けば良かったのに。
勉強が壊滅的な自分にとって、受験期の学校など拷問場に等しい。
キーンコーン……
「離退任式を行います。生徒は講堂に移動して下さい」
離退任式?
クラス中に疑問詞が溢れる。
この時期に?
まさか担任が替わるのか。
迷惑以外に何者でもない。
「瑞希ー、行こうぜ」
シューズをくるくる回しながら、金原が言った。
講堂。
何かと予算をかけるうちの学校は、市民ホール並みの講堂を作った。
正直な感想、権力の象徴にしか思えない。
音響装置が至る所に散りばめられ、ライトは三方向から調節できる。
さらには座席数だ。
全校生徒が五百満たないと言うのに、何故千を超える椅子があるのか。
「瑞希ー! 先に座れや。お前が奥なんだから」
金原に促されて、ゆっくり腰を下ろす。
すぐに辺りは静まり返った。
「えー、只今より……離退任式を始めます。始めに離退任される先生方の紹介からさせて頂きます」
俺は眠る姿勢に入る。
どうやら事務と保健室の養護教師が替わるだけらしい。
関係ない。
「……類沢雅です」
ざわざわ。
え、今聞き間違いじゃないよな。
「養護教師を勤めさせて頂きます」
女子から黄色い悲鳴が漏れる。
類沢雅。
まるで芸名かと疑う、美しすぎる響きと、それに見合う容姿。
肩までの髪をポニーテールのように一つにまとめている。
「三年は受験ストレスもあるだろうから……休みたい時はいつでも来て下さいね」
なんだろう。
何か、胸がざわつく。
類沢はニコリと笑って下がる。
一言で表せば
妖艶。
その視線に捕らわれるのが妙に怖くて、俺は目を伏せた。