どこまでも玩具
第7章 阻まれた関係
急ブレーキを踏み、車を停める。
八時。
類沢は時計を見て溜め息を吐いた。
「……瑞希」
走って学校の玄関に入る。
真っ暗な廊下に非常灯だけが明かりを照らしている。
階段を駆け上がり、全ての教室を確認する。
―縛ってどっかのトイレに置いて来ちゃったぁ―
雛谷の言葉を思い出し拳を握る。
―今頃、誰かさんに遊ばれてるかもよ? 急いで探さないと―
学校周辺の施設を虱潰しに回った。
勿論反省室と、校内のトイレも確認した。
だが、いなかった。
屋上に着く。
鍵が閉まっている。
類沢は管理室でくすねてきた鍵束を探る。
どれだ。
ジャラジャラ。
どれだ。
何十もの鍵が鳴る。
屋上の文字を見つけ、鍵穴に差し込んだ。
開いた。
冷気が吹き込んでくる。
月明かりが白くその輪郭を光らせている。
きっかけは金原の言葉だった。
あのあと保健室に戻ると、まだ二人が残っていたのだ。
「あ、類沢先生」
「瑞希は?」
「……今から探す」
誰が犯人かなど云いたくもない。
類沢は急いで鞄を掴む。
「もしかして、屋上にいたり……」
それはない。
類沢は保健室を出る。
「有紗に連れられてったもんな」
有紗?
仁野有紗?
その後雛谷に襲われたのか。
なぜ、屋上を先に見なかったのか。
焦っていたんだろう。
カツカツ。
建物の陰を一つ一つ覗く。
いない。
そして、諦めようとしたとき、出口の隣に小さな倉庫があるのに気がついた。
入ったことはない。
存在すら知らなかった。
その錆びれた様子から、人がいる気配は感じられない。
しかし、鍵束を取り出した。
倉庫と書かれた三つの鍵を試す。
ガキン。
違う。
キンッ。
違う。
最後の一つ。
カチャリ。
金属音と共に扉が開く。
暗い室内。
目が慣れず、足を踏み出した途端に何かを踏んだ。
嫌な予感がして足を戻す。
手探りでスイッチを押した。
同時に室内がはっきり姿を現した
言葉を失う。
湿った空気。
濡れた床。
そこに転がる瑞希。
学ランが被されただけで、裸だ。
類沢は上着を脱いで着せた。
ツンとした臭いがする。
瑞希は半眼で意識を失っていた。
暴力の跡もある。
手足は縛られた縄目模様。
太股には誰のかわからない精液が流れている。