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止まない雨はない

第2章 プリテンダー

あの玄関でのタカシは………。

…………了解、ハニー。

キスをして、名残り惜しそうに指先で、そっと自分の頬を撫でて離れていった。


まさか…!?


ルカは思いついたようにタカシの携帯電話に架けてみる。


『system is not getting the response from subscriber's mobile phone(お架けになった電話は、電波の届かない場所におられるか、電源が入ってないため、かかりません…)』



タカシさん…………!?



まるで土砂降りのなかに独り、放り出されたような、そんな気分だった。
あの玄関でのキスは……さようならのキス。


優しいタカシが選んだ、残酷な答え。


「あなたは、最初からオレ一人で…ドイツへ行けと?」


震える体が崩れそうだった。ルカは声を上げて泣きたいのをひたすら耐えた。


そして、それを遠く柱の影から、目立たぬよう、そっと見守るタカシがいたのだ。

「………ごめん、ルカ」

タカシは柱にもたれ、眼を閉じた。今なら…『びっくりした?』そんな風に飛び出して行けば間に合う。


オレの愛してやまない大事なルカ。


新天地は、お前の腕を必要としているんだ。


そのためには、オレはあまりにもお前に負担でしかない。


お別れなんだよ、ルカ…………。


ロビーに成田行きの飛行機の搭乗を急かす、アナウンスがくりかえし響く。


「……タカシさん……愛しています。だからきっと……オレ、ドイツから戻ったら…」




あなたを必ず捜してみせます!!




そんな決意を胸に抱き、ルカが搭乗口へと消えてゆくのを、
タカシはいつまでも、いつまでも見送るのだった…。

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