 
クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜
第9章 黒海海戦
ゾーナタはストームを牽引しながらゆっくりと黒海の海上を飛行していた
あまりにも巨大なストームを牽引しながらでは満足な速度が出せずにいるが、早急にトルコ沿岸から離れたいのが実情だ
いつ黒海沿岸警備のゼントリックス軍が強襲してくるのかわからない
いま襲われてもストームを完全にコントロール出来ないうちは戦闘したくはなかった
ガブリエラと名を変えたクレアは早速ゾーナタ搭載機のフリューゲルたちのシステムメンテの仕事を始めていた
襲撃から帰還してきた機体の摩耗度をリストアップして各パイロットに適切な操縦をレクチャーしていく
戦闘シュミレーションをこなしてきたパイロットたちだが機体の情報から読み取り説明してくれる彼女のレクチャーはありがたかっただろう
だれもそんな指摘をされたことがなかったのだから
合間の時間を作ってガブリエラはストームの解析チームとも合流する
旧時代的なマシーンなので今のメカニックマンたちにはとても手に負えなかったのだ
ガブリエラはアナハイムでのテスト機のこれまでの過程を叩き込まれていたおかげで、この旧時代の機体のイメージをふくらませていく
それはまるで恐竜と鳥をつなぐミッシングリンクなようなパーツを探し出そうとする探査に似ていた
そこで彼女の頭の中で思い浮かんでいたのは、もうひとつのIfの歴史だ
もし宇宙世紀にモビルスーツが生まれず、戦闘機が進化していく世界だったら?
このカタストロフマシーン〈ストーム〉はその化石なのではないだろうか?
宇宙艦隊が装備していたメガ粒子砲が小型化されモビルスーツが扱えるまでのサイズになったように、
メガ粒子砲が戦闘機に搭載されればどうなるのか
このマシーンは小型化出来なかった当時の技術の限界点だったのではなかっただろうか
その化石に接触してしまったために命を落としてしまったスコット、そしてふたりのキアラ
ガブリエラとして第二の人生を進み始めようとする彼女だったが、なぜ私だけが生き残ってしまったのだろうと苦悩してしまうのだった……
そしてときおり寂しそうな表情を隠せない彼女を
ヨハネス司令とスティーブ・グリメットは見守る事しか出来なかった
 
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