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時給制ラヴァーズ

第3章 3.うそつきデートの行方

「すごーい慶人! ちょーキレー! 早く来て見て!」
「はしゃぐと転ぶぞ」

 頭上はすっかり夜の闇に覆われているのに、水平線から届く赤い光が海にきらきらと反射して驚くほど綺麗。
 テンションが上がってその場でくるくると回って浮かれる俺に、慶人が冷静に注意を投げてくる。
 なんというクールさ。でもせっかくだから並んで一緒に写真を撮ろうよ、と大人な慶人へと手を伸ばす。

「大丈夫大丈夫。俺運動神経悪くな……いいっ!?」

 言った傍からまた失敗。
 あまりに浮かれていたためかその不安定な格好でバランスを崩した俺は、踏ん張るためについた足の下に流木があることに気づいたけどその時には立て直すことが出来なくて。

「ほらな」

 転ぶ、と思った瞬間、笑い混じりの慶人の手が俺の腕を掴みそのまま引き寄せられた。
 観覧車の時も思ったけれど、慶人は意外と力強い。

「お前って結構ベタだよな」
「……自分でもそう思う」

 これじゃあ酔っていないと言い張る酔っ払いみたいなものだ。危ないと言われ、大丈夫と答えた瞬間転びかけるなんて、フラグ回収が早すぎる。

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