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時給制ラヴァーズ

第7章 7.ヴァージンペーパー

「正直言って、一目惚れとか出会った瞬間電気が走ったとか、そういうんじゃないんだ。お前を見た瞬間男に目覚めたとか、お前を女の代わりにしてるとか、そういうんじゃなくて」

 ぱちぱちとまばたきをするくらいしか出来ない俺に、慶人は言葉を探るようにして繋げている。
 いつもはなんでも端的に告げる慶人にしたら珍しいくらい言葉探しに苦労しているみたい。いや、探しているのは気持ちだろうか。

「城野にバイトを頼む時に出した外見の条件も、タイプとかじゃなくて―いやそもそも男のタイプなんかないし―とにかく親受けする清潔な奴ってことだけで、だからお前も見た目でいきなり好きになったわけじゃなくて……美人だとは思ったけど」
「え、ありがとう」

 不意打ちな流れで褒められたから思わずお礼を言ってしまったら、咎められるように目を細められた。
 しまった。お礼は後で言うべきだった。

「……えっと、いつ、から?」

 話の腰を折ってしまった手前、俺は混乱中の頭でなんとか言葉を搾り出す。
 元からでもなく、運命的なものでもなく、衝撃的なものでもなく。だったらなんのタイミングで男同士という一般的なタブーを踏み越えられると言うんだ。

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