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『エリーゼのために…』

第1章 エリーゼのために…


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 そして舞香ちゃんは話し始めてくる…

「あ、あのね……
 あ、あのね、わたしね…
 去年の11月くらいまではね、あ、怒らないでね…
 わたしね、駿くんには全く興味なかったのよ…
 本当に、ただの、普通の、あ、存在だけ知っている感じだけにしか想ってなくてね…
 
 あっ、だから、駿くんとは二人きりでさ、ちゃんとまともに話した事なんてなかったわよねぇ…」

 僕は、頷く…
 確かにクラスは違っていたし、彼女は優秀で、スポーツ万能で、活発で明るい女の子で、皆から好かれているような存在であったから、普通の、ごく普通の僕なんて、いや、僕の存在を知っている事がびっくりなくらいであった。

「ホント、興味なかったの…
 あ、異性としてね…
 でもね、あ、可愛い顔の男の子だなってくらいには知っていたのよ…」

 そう、僕は、小学生まではやや髪が長く、女の子に間違いられるくらいな感じだった…
 だからそれがイヤで、中学生になってから髪をソフトモヒカン風にバッサリ切って、すいて、スポーツ刈りのやや長い感じのツンツンヘア気味に変えたくらいであったのだ。

「ところがさぁ…
 12月になってからからねある日、そう、半ばくらいだったかなぁ…
 駿くんを見かけでドキっとしちゃったのよ…」

「えっ?」

「なんかさぁ、可愛いプラス艶気?っていうのかなぁ…
 うーんとねぇ…

 あっ、そうそう、なんとなくさぁ、中性的になった、ううん、中性的に可愛いく見えた…
 そんな感じに見えてさぁ、わたしドキンとときめいちゃったのぉ…」

「ち、中性的って…」

 ちょうどその時期は、葵さんとの関係が始まった時期であり…

 中性的…

 それは、僕が、葵さんに女装させられ、ハマり始めた時期と一致する。

「うん、中性的よ…
 いままでみたいな可愛い男の子なんだけど、なんか、少し女の子っぼく…
 いや、女の子みたいな可愛いさ…
 うーん、なんていうのかなぁ…

 あっ、そう、ほら、女の子はよくボーイッシュみたいな…って表現があるでしょう?」

 ボーイッシュ…
 それは、正に、舞香ちゃんがそう、その表現にピッタリな女の子なんだけど…

「ボーイッシュって…
 ぼ、僕は男だよ…」
 そう、笑って返す。

「うん、ごめん、でもね、なんかね、そんな感じに可愛く、魅惑的に見えちゃったのよね…」



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