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おとなの女性の為のえっちな恋愛カタログ

第3章 カタログNO 2 呼びたい男と呼ばない女 後編

いつも あいりと会う時は
夜だから 薄暗い店の中か
車の中で それで誰かが居る時ばっかで

ふたりきりになるのは
俺のマンションのあの部屋で


俺が ここに あいりと来て

きっと まだ 15分程しか経ってない


その 15分は 俺の知らない

色んな この傘の色みたいに

色んな あいりを俺に見せる


そう 例えば


そんな風に
人懐っこい笑顔で笑うんだなとか


そう 例えば


こんな風に
話を…するんだなとか



そう 例えば


俺の名前…も 普通に呼ぶんだなとか


俺が知っている あいりの


半年分の 夜の顔とは


今の俺の目の前に居る あいりの


15分間の 昼の顔とは


まるで 別人みたいに感じる


半年も 過ごして

何度も抱いて


知ったつもり…に
俺が勝手になってただけだったんだなって


頭上のオレンジの傘が


徐々に赤く移り変わって行って


赤い光の影が あいりの顔に落ちる



「呼んだから…、来たんだけど?」


そう 呼んだ
私が 彼を呼んだんだ


会いたいって言って 私が彼を呼んだ


「呼ばれたから、来てくれた?」

「ったり前じゃん?呼ばれないと
来れないと思うけど?違う?」

「呼んだから、来てくれた?」

そう あいりが問い方を変えて来て

その問いかけの答えを
多少返しにくいと感じながら

「そう…だって、言ったら?」


「じゃあ…さ、また、
こうして、呼んだら…、会ってくれる?」




頭の上も 足元も

一面の 赤 赤 赤に 染められた

その 赤い世界の中で

あいりがそう 
宇梶対して問いかけて来て



「呼んでくれるなら…、来るかもな」


「そっか」



そう あいりが宇梶の言葉に
返事を返して来た時には

七色の世界は終わりを告げていて


明るい 日差しの下に戻って来ていた



「なぁ、さっきの場所にさ、
ちょっと、戻ってもいいい?
写真撮り損ねてたからさ、
写真、撮ってもいい?」

「ええ。そう言えば
私も、写真、撮ってませんでした」


そう言って 終わりを告げた

七色の世界をお代わりしていると


宇梶が スマートフォンで
七色の傘の写真を撮っているのが見えて

周囲の傘の写真を撮っているフリをして

こっそりと 1枚だけ

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