はい。もしもし、こちら、夫婦円満本舗です。
第6章 『真奈美の嫉妬とオムライスの思い出』
けど…親父がうちに帰って来る日は…、
決まって翌日は…お袋が凄い機嫌が良くて。
僕の好きな、オムライスを作ってくれた。
僕は…どんなお店のオムライスよりも、
お袋が作ってくれるオムライスが…大好物だった。
そう…大好物…だった。
その…離婚届…と書かれた緑の紙を見て。
10歳の子供ながらに…僕は悟ったんだ。
もう…、お袋が作るオムライスは…
もう、二度と食べられないんだなって。
そう思うと…涙が…出て来て…止まらなかった。
ぐうううぅ…とこんな時なのに、
自分の腹の虫が鳴いて、静まり返った部屋に
その虫の声が…妙に大きく響いて聞こえた。
プールで泳いで遊んだ後だったから、
お腹は…酷く空いてた、何か
食べる物が無いかと、冷蔵庫を開けたら。
ラップが掛けてあるオムライスが2つ入って居た。
電話の横に置いているメモの紙に、お袋の字で
” 仁へ
お母さん…、しばらくお家に帰れないから
お父さんと…一緒にいい子にしててね。
仁の好きなオムライス…食べて待っててね
母より ”
そんな…ボールペンで書いた文字が
所々滲んだメモがオムライスに添えてあった。