はい。もしもし、こちら、夫婦円満本舗です。
第14章 『慰安旅行・翌日』
ドンッ……っと、
後ろから、衝撃が来るのを感じて。
油断してた。
そう…、油断してた。
まだ…近くに居た…のか…ッ。
スマートフォンでの通話に
気を取られていて。
その存在に気が付くのが遅れた。
夫婦円満本舗の前に、
仁のスマートフォンが転がって行って。
通話したままだったスマートフォンからは、
異常を察知した内村が
仁を呼んでいる声がしている。
『全部…お前が…悪いんだよ…。
全部…、お前が…悪いんだよなぁ?
他にも…女…好きにして置いて…、
贅沢…すぎ…、楽しかったか…?
真奈美との温泉旅行はよ』
黒のパーカーにジーンズ姿の男は、
地面に蹲って居る仁に
そう問いかけて来る。
黒のパーカーをすっぽりかぶった男は、
フードの所為で顔がはっきりと見えない。
『真奈美と…楽しんだんだろ…?』
黒のパーカーの男の手には、
ナイフが握られていて。
その刃の先端からはポタポタと
仁の血が…地面に落ちていて。
点、…点、と赤い点を繋げて。
赤い池を…そこに広げて行く。
『楽しんだんだろ?
…俺の…真奈美と昨日は、
楽しんだんだろって、言ってんのが
聞こえてねぇの…かよ…?』
『ああ、温泉旅行?…楽しかった…よ』